メーカーと販売店の成長戦略 相互補完と相反する活動も
部品や機器商品のメーカーと販売店の間には販売契約がある。一般的には代理店、特約店という名称を用いている。産業市場が拡大し、社会の仕組みも複雑になって、メーカーと販売店の販売契約はより複雑になった。
草創期から成長期に入り、売り上げ拡大を目指していた頃はメーカーと販売店との販売契約は単純な取引契約一本であった。現状では、メーカーから見て一次商流、二次商流の販売契約店や内客によってジャンル別に分けて契約する販売店などさまざまであり、名称も代理店、特約店のほかに特約販売店、機器販売店、特機販売店のように○○販売店や○○店という名がある。販売店の会社案内には取り扱いメーカーが羅列してある。特に販売契約をしているメーカー名には代理店、特約店、○○店をつけているがメーカーとの関わりはどのようになっているかは不明である。したがって販売店の営業マンが会社案内を持って客先訪問した際に「貴社はどのメーカーに強いのか」などと問われることがあるようだ。
かつてよくいわれていた「商品30年説」というものがある。ひとつの商品は、草創期から数量や性能、形を変えながら30年で衰退に向かうというものである。
部品や機器商品のメーカーと販売店の関係は草創期からの段階によって違った様相を見せている。業界の草創期には販売店が販売契約を結んでいるメーカーは1社または2社程度のものだったのが、成長段階に入ると数社のメーカーと販売契約を結び、ある分野では販売契約を結んだメーカー同士が競合ライバルの関係にあるという状況が普通になっていった。それで市場が拡大の一途をたどっていったので販売チャネル型のメーカーでさえ気にはしていたが、危惧まではしていなかった。
90年代に業界の成熟段階に入ると市場の様子は拡大一辺倒から一転して先行き不透明感が漂うようになった。この時点でメーカーは販売チャネルの再編を模索し始めた。成熟度の高い商品を持つメーカーから順次、販売チャネルの編成を変え始めた。具体的にはメーカーが販売店に資本を入れて系列化を図ったり、販売店同士の合併を促進して、競合ライバルメーカーと対抗するのに大型店化を図ったりすることなどであった。
現状では競争が一段と激しくなり各メーカー商品SOMの拡大を狙って、販売チャネルの再々編成を画策してきたが、思うほどダイナミックになっていない。基本的にはメーカーの系列店やメーカーの意にかなう大型店中心である。確かに席巻してきた商品群を販売するには最も効率の良い販売チャネルなのだろう。しかし見方を変えれば、最高の効率とは硬直していることと同じともいえるのである。
産業用の部品や機器商品を使う側の市場が変われば、席巻してきた商品群も変わる。したがって部品や機器商品は、将来を予測した市場を視野に入れると、カバー領域はかなり広くなる。最高の効率を求めるあまり、カバー領域を限定していることになっては元も子もない。販売店の基本戦略は顧客の拡大である。したがって販売店であっても席巻してきた商材では顧客が拡大しないとわかれば、カバー領域を限定せずに営業活動する必要がでてくる。そうなればメーカーの基本戦略であるシェアの死守、あわよくばシェア拡大に全力を挙げなければならない販売店は、本来販売店が成長するための基本戦略とは相反する活動に力を注がなければならないことになる。メーカーと販売店は、相互補完と同じくらい相反するものが内在していることを理解して新しいディーラーヘルプの概念を構築するときである。