ダイバーシティが輝くものづくり 「オムロン京都太陽」の取り組み (上)

企業と福祉をつなぐ役割

オムロン京都太陽(京都市南区、宮地功代表取締役社長)は、オムロンと社会福祉法人太陽の家との共同出資会社で、ソケットやセンサといった産業用機械で使われる製品を中心に製造を行っている。企業と福祉の両面をつなぐ役割を果たすことで、障がい者の雇用就労の機会をつくり、仕事の安定供給と事業経営の安定を図りながらノウハウを広く社会に提供している。年間4500人もの見学者が訪れるが、3割程度は海外からで、世界的にも注目を集めている。

■歴史と背景

太陽の家の設立は1965年。身体障がい者の雇用が法令で義務化される以前で、東京オリンピック・パラリンピックの翌年にあたる。創設者の国立別府病院整形外科科長を務めていた中村裕博士は、東京パラリンピック開催に尽力し、日本選手団団長として大会を成功裡に終わらせた。しかし、多くの外国人選手が給与を自由に使えるような仕事を持ち、自立しているのに対し、日本人選手はほとんどが自宅か療養所で介助を受けているという現実を受け「身障者が自立できる施設を造る必要がある」と感じ、これを現実化した形だ。

71年にはオムロン創業者立石一真氏との出会いがあり、翌年、大分にオムロン太陽を設立、さまざまな困難を克服し初年度から黒字を達成する。85年には林田京都府知事(当時)の誘致によりオムロン京都太陽が設立され、今に至る。
■人の能力を引き出す「ローコスト インテリジェント オートメーション」

オムロン京都太陽では多くの社員が製造ラインを支えている。障がいを持つ者も多く、障がいの状況もさまざまなため、製造現場では機械が人に合わせて動き、人の能力を引き出している。

例えば部品の袋詰め作業は、「袋を開く」「小さい部品を入れる」といった作業は自動化を行い、つかみやすいサイズの部品は作業者自身が入れるというように、人と機械のベストマッチングを図っている。

自動化は外部に委託するのではなく、基本的には自社内で行う。旋盤や工具も社内にそろえ、作業する人にあわせて使い勝手を都度調整、コストを極力かけずに製造する。すでに600台以上の装置、治具、装具を開発し今でも250台以上が現場で活躍している。装置には「検査の達人・検太」「ベース締め太郎」など名前が付けられ、愛着を持って活用されている。現場ではラインリーダー、作業者を問わず提案を行う文化が根付いており、毎年1万件を超える改善提案が寄せられているという。
■事業として継続できる理由

オムロンは「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」という社憲がある。中村裕博士は、オムロン創業者の立石一真氏と会うまで300社近くの企業に同様の相談をし、断られていた。あきらめかけたその時、唯一賛同してくれたのが立石氏だったという。

志だけがあっても、事業として継続ができないと意味が無い。オムロンは製品製造を同社に発注し、生産技術で生産の効率化を支援することでオムロン京都太陽を支え、同社はそれに応えるべく日々改善を重ね、品質や生産性を向上し、しっかり競争力を確保している。ドルショック直後の困難な時期であったにもかかわらず構想実現に尽力し、初年度からの黒字化を達成、さらに世代を超えて活動を広げることができているという背景にはこの社憲があるのではないだろうか。

オムロン京都太陽では個人、団体問わず随時見学を受け付けている。申し込みなどはHPで。

http://www.kyoto-taiyo.omron.co.jp/social/factory.html

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