製造業で物流の果たす役割が大きく変わりつつある。3Dプリンタの登場で作ったものを運ぶという役割に加え、自らも製造代行的な動きにも取り組み始めている。一方で、製造業の流通部門を担う商社が配達機能を分離化して専門物流業者に委託し、販売強化へシフトしようという動きも目立ってきた。インターネットの普及に伴うEC(電子取引)の利用が増加する中で、製造業における物流の果たす役割はますます重要性を増している。
日本通運はカブク(東京都新宿区、稲田雅彦代表取締役社長)と提携して、3Dプリンタを使った製造支援サービスを開始する。カブクが日通に対して、3Dプリンタなどのデジタル製造技術を活用したカスタマイゼーション(個別大量生産)実現に必要なノウハウを提供し、日通がこれをオンデマンド製造サービスとして、カブク海外33カ国、日通42カ国(662拠点)のネットワーク工場群を通じて製造、及び搬送、保管サービスなどを行う。
ヤマトホールディングス傘下のヤマトシステム開発(東京都江東区、星野芳彦代表取締役社長)は、羽田クロスゲート(東京都)に「3Dプリントセンター」を開設し、オーダーメイドで少量多品種の製造が必要な治療用装具や医学模型の3Dプリント・配送サービスを2月1日から開始した。
3Dプリンタ用のデータの「型」をヤマトが回収してスキャンデータを作成。それを利用して造形を行い、配送するもので、ヤマトグループ内で、ワンストップサービスの提供ができる。
3Dプリンタや3D技術がなくても、スピード、高品質、セキュアなデータ管理に優れた利用が可能になる。
物流大手のDHLによると、3Dプリンタ技術の利用は、義手や義足から、保守用部品にも広がるとみており、物流業者が部品の製造と配送を請け負うサービス利用も増えることで、物流企業が製造業で果たす役割が高まるとしている。
一方、製造業の製品流通を担う商社も大きな変革期に入ろうとしている。商社は販売、物流、回収、金融などを主な役割としているが、このうち、物流機能をアウトソーシングして切り離す動きが目立ち始めた。
扱う製品が単品からモジュール化やシステム化傾向を強めていることから、営業手法も輻輳化し、より営業に特化したソリューションとしての取り組みが求められつつある。また、EC化の流れのなかで、商社には別な形での介在を期待する動きもある。それは、ユーザーでは、購買窓口のアウトソーシング化や一本化の動きであり、人手不足解消や環境負荷低減の面では、共同物流・共同配送を求める社会全体からの要求である。
関東では東京・秋葉原の商社間で、東京都電機卸商業協同組合が音頭を取って、秋葉原地域での共同配送に取り組んでいる。秋葉原という同業間での取引が多いという地域事情も後押ししている。
しかしここに来て、これを一歩進め、物流機能を分離して専門業者に任せようとする動きが顕著になってきた。
東京では、2016年2月から高木商会(大田区、中山広幸代表取締役社長)が、16年11月から中央無線電機(中央区、曳地夏夫表取締役社長)がすでに分離しているが、近く大和無線電機(文京区、堀内覚表取締役社長)も行うことにしている。
物流機能を請け負うのはいずれもオーティーティーロジスティクス(大阪府高槻市、水田啓司表取締役社長)。同社は電子部品、制御機器、精密機械のみに限定して運送しているのが大きな特徴で、それだけに出荷、保管、在庫といったあらゆる面で高品質実現を目指して、メーカー、商社、エンドユーザーからの信頼を得ている。
商社では物流機能を分離することで、営業に専念した形での人員配置ができることに加え、物流費を固定費から変動費に置き換えできる利点も生まれる。
商社もECとの棲み分けや人手不足対策など製品以外での課題も多く、次へのステップアップへ向けて大きな選択を求められようとしている。