一本調子の販売から脱却 現場を見る目組織的に活性化
節目というものがある。節目を迎えると人はそれまで蓄積してきた経験をもとにして何かを変えようとする。人や組織が節目にイベントを挙行したり、方向の転換を試みるのはその表れである。
オートメーションと言われる制御業界でも、節目に何かを意図して変えようとしたわけではないが、10年という節目でさまざまな変化をしてきた。
1960年代の創業時代を経て70年代になると、製造業は本格的に自動化に取り組みだした。80年代に入って自動化に使用する部品や機器商品が出そろって、展示会が各地で頻繁に行われるようになった。90年代に入ると機器商品の複合化や部品のモジュール化が進んだ。そのため販売店の営業でも商品に関する技術的な知識の習得が求められるようになった。
2000年代にはいよいよ情報化時代に突入し、20世紀とは違ったパラダイムの変化があった。グローバル化、IT技術の加速、通販の存在感等々が業界に大きく影響した。10年代に入ると本格的な多様性の時代になり、製造、販売が多様性にどのように取り組むかという戦略が重要な時代になっている。10年おきに起こる変化は、10年間で蓄積されたものが次の10年を変えていくのである。
製造のやり方も社会やそれぞれの業界の成長、成熟の度合いによって種々増えてきた。省力機械や治具を使う手組み半自動ライン、量産一貫自動ライン、多品種対応のセルライン、さらに最近は付加価値を特に意識したコンパクトラインがある。コンパクトには何をコンパクトにして付加価値を上げるかによって異なっている。
例えば製造コストの極限化を狙い、先端技術で工程の縮小を画すライン、製品価格は割高になっても需要の動向を見てあえて数量のダウンサイジングを狙ったライン、設備を卓上でも使えるようにした文字通りのコンパクトなラインなどがあるようだ。
昨今ではIoT文化の到来が騒がれだし、製造業もドイツからやってきたインダストリー4.0と呼ばれるラインが喧伝されている。これまで製造業はコスト、品質、生産力を追求し、競争してきた。日本のように社会が豊かになると多様化が起こる。したがって本格的な多様性の時代にいる昨今、製造業は付加価値を求めて需要や市場にあった作り方になってくる。単に安く、早く、たくさんではなく、顧客、市場に対応して付加価値の取れる製品を設計し、場所を含めて最適な生産様式を採用することになろう。
こうした製造業に対応している営業も多様性を理解し、これまでやってきたコスト、品質、他社にない機能をアピールする一本調子の販売から脱することが、多様性での最適販売になる。例えば、新商品の発売は、これまで営業にとって心強いものであり、顧客に胸を張って新しい機能や品質をアピールする場を提供するものであった。しかし従来と比べたり、他社と比べて、新しいのは新しくても、顧客にとっては付加価値が何も変わらず、ただただ新しがっているだけだということになりかねない。
製品設計や製造の現場は文字通り多様になっているので、最前線にいる営業がそれらの現場を的確に見る目を持って後方の企画スタッフに伝達すべきである。
また多様性というのは一筋縄ではいかないがゆえに、多くの現場を見る目が必要だ。それらの目を組織的に活性化するために販売店とメーカーで構成するディーラーヘルプというチーム組織が重要になる。現状のディーラーヘルプという認識は、メーカーの一方的支援になっているし、メーカーのDH部門は販売店のお守り役的存在になっている。DHチーム組織が次の10年の商品SOMを上げることだってあることを理解し、この組織を期待される戦力に引き上げるべきである。