日本の生産性はアメリカやドイツに比べて低いと言われ、第4次産業革命を進める上でも、生産性の向上は大きな課題であり、日本の製造業が熱望してやまないものでもある。日本がアメリカやドイツの生産性に追いつくためにはどうすべきか? 内閣府が1月にまとめた白書「日本経済2016-2017-好循環の拡大に向けた展望-」から紐解く。
■OECD加盟35カ国中22位。平均以下の日本の生産性
日本生産性本部の調査によると、2015年の日本の一人当たりの労働生産性は7万4315ドル(783万円)で、OECD加盟国の平均8万9386ドルを下回り、35カ国中22位。ベンチマークしているアメリカは12万1187ドルで3位、同じくドイツは9万5921ドルで12位であり、日本は決して生産性の高い国でないことが分かる。
■アメリカ・ドイツと日本の差 低いTFPとICT資本
生産性の格差が生まれた要因について白書では、日本は「全要素生産性(TFP)」と「ICT資本」が低く、両国と大きな差があるとしている。TFPは労働と機械設備、原材料投入も含めてどれだけ効率よく生産活動に使われているかを示し、技術進歩や効率化を示す指標と考えられている。ICT資本とは労働者一人当たりの情報技術資本のことを指す。日本はTFPがアメリカの半分、ドイツの4分の1程度で、ICT資本の装備率についても両国の3分の1程度にとどまっている。
■イノベーションへのR&D投資がポイント
TFPを伸ばすためにはR&D投資が重要な要素となり、日本は投資規模こそ大きいが、それが「既存技術の強化」に偏っていることがTFP伸び悩みの原因とみている。
経済産業研究所が実施した調査によると、新事業の創出や自社の技術基盤の強化にR&D投資を使う企業の割合が、アメリカが50%強に対し、日本は30%程度。逆に既存企業の強化と答えた日本企業は70%。新事業に熱心なアメリカに対し、日本は既存の延長線上でしか動けていないことを示している。
R&Dの強化には企業の枠組みを超えたオープンイノベーションが有効とされるが、日本はこの分野についても遅れていることを示唆。さらに、イノベーション競争力が高まっていかない要因は、イノベーションに対する政府の関与が薄いことも理由とされ、政府から企業に発注する際、アメリカでは最先端技術を要求することで企業のR&D投資が促されており、日本でもこれに倣う必要性を指摘している。
■企業改革とICT投資は同時並行で実施すべし
日本でICT投資が進まず、ICT資本が弱い状況について白書では、日本は他国に比べてICT投資が高コスト体質にあることを要因として挙げている。日本は90%が受託開発なのに対して、アメリカでは受託開発が60%で、パッケージソフト利用が40%。日本では受託開発やカスタム要件が多いことから1件あたりの単価が高くなり、それによって中堅・中小企業のICT投資が阻害されてしまっている。
また、投資対効果を良いと感じている企業が少ないのも低調の大きな要因のひとつ。特に既存の組織や業務の仕組みのままICT導入を進めた企業はその傾向が強く、反対に、組織改革とICT投資を一緒に行った企業では80%が経営計画の立案と実行能力の向上効果があったと評価している。白書では「企業組織改革を伴わないICT投資は効果が得られにくい」とまとめている。