システムインテグレーター(SI)の役割 ロボットSIは実績を見て発注を
産業用ロボットに対する関心が高まり、「現場に導入するためにどうすればいいのか分からない」「新事業として自社でロボットの取り扱いを始めたいが、どんな技術や知識が必要なのか」という声を聞きます。これらに共通するのが、現場や作業内容に応じた適切なシステムを組み上げる「ロボットSI(システムインテグレーター)」であり、世界的に不足していると言われる職種です。ロボットSIとは、ロボット導入において一体どんな役割を担い、どういったステップを経て現場へ導入していくのかを解説します。
1・システムインテグレーターとは
産業用ロボットは、本体と周辺機器さえ購入すれば、作業を行ってくれるわけではありません。例えば、ロボットに溶接をさせたい場合、産業用ロボットと溶接機を電気的・機械的に設置するだけでなく、溶接がうまくいくように「条件出し」というセッティングする必要があります。また、ロボットの教示(ティーチング)も必要になります。これらを行ってくれるのがロボットSIです。
2・優れた提案力を持つロボットSI「ROSECC」
大手自動車メーカーなどにウォータージェットのロボットシステムの納品実績のある株式会社ROSECC(名古屋市名東区、堀志磨生代表取締役)の協力のもと、どのように産業用ロボットを導入されるか、その流れ「ヒアリング」→「エンジニアリング」→「設計」→「設置&セッティング」→「検証」の順にご説明いたします。
①ヒアリング
ヒアリングは、お客様から「製品をどのように加工したいか」「スペースは小さくまとめたいか」「1製品あたり何分何秒で作業したいか」「人件費をどれだけ削減したいか」などを聞くことです。
②エンジニアリング
エンジニアリングは、ヒアリングからハード(ウォータージェットやロボット)の選定、次にロボット台数、台数が決まるとレイアウトを決めていきます。
この「エンジニアリング」がSIのノウハウの見せどころで、ROSECCでは、「機能」はもちろんのこと、「コストを抑えて良いものを提案」してもらえます。
③設計
設計は、レイアウトからCADソフトなどを使用してロボット・ウォータージェット・製品・治具などの位置関係を具現化し、干渉などの問題が起こらないか、効率が良いかを検証します。
④設置&セッティング
設置&セッティングは、ロボットなどを配置し、ウォータージェットのマッハ数などをセッティングします。
⑤検証
検証は、実際にロボットに作業をさせてテストを行い、ユーザが望む加工ができていることをチェックします。
3・ウォータージェットはどういう場面で必要か?
製品をカットしたい場合、超音波カッター、炭酸ガスレーザ、ファイバーレーザなどが使われるケースがありますが、大手自動車メーカーは車の天井材やフロアカーペットではウォータージェットを使用します。その理由は3つあります。
1つ目の「サイクルタイムが速いこと」です。超音波カッターの2~2.5倍の速度でカットできます。
2つ目は「精度が高いこと」です。天井材の許容誤差はプラスマイナス0.5ミリ、フロアカーペットはプラスマイナス0.1ミリですが、これを実現できます。
3つ目は「熱が入らないこと」です。例えば、熱が入ると天井材のウレタンが溶けてしまうので、熱による製品の変形などを避けることができます。
4・さまざまなティーチングソフトを試したROSECC
第1回の記事で、産業用ロボットにはティーチングが必要である旨を記載しましたが、ROSECCもロボットメーカーが販売している安価なソフトから、高機能で数千万円するソフトまで、いろいろなティーチングソフトを試しました。その結果、現在は弊社ソフトを活用しています。理由は、現場向き機能が有りながら、簡単で使いやすく、リーズナブルでサポートが良いとのお声を頂いています。
5・悪質なSIに気を付けましょう!
産業用ロボットを初めて導入される企業は、付き合いのある商社やメーカーにいくつかSIを紹介してもらうと思います。
しかし、SIによっては、エンジニアリングと設計、検証が中途半端、もしくは行ってくれない場合があります。そうなると、製品の大きさや形状によってはロボットが届かなかったり、ロボットの姿勢によってはケーブルやホースが切れそうになったり、加工後の製品が不良品だらけになったりなどの問題が起きます。全国の工場を回っていると、「ロボットが工場に設置された段階で、テストもせずに検収してしまい、ロボットを動かしてみたら加工がうまくいかなかった。今はほとんど稼働していない」とのお声を聞くことがよくあります。
SIを選択される際は、決してコストだけでなく、そのSIがどこまでやってくれるか、実績があるかをよく調べてから発注することが重要です。
ホームページ上に「産業用ロボットならまかせてください」のような記述があっても、本当に実績があるかは分かりません。十分な注意をしていただきたいです。弊社に問い合わせていただければ、良いSIの紹介だけでなくロボットにまつわる、さまざまなことの相談に乗らせていただきます。
◆山下夏樹(やましたなつき)
富士ロボット株式会社(http://www.fuji-robot.com/)代表取締役。産業用ロボットコンサルタント。サーボモータ6つを使って1からロボットを作成した経歴を持つ。自社のオフラインティーチングソフトでさまざまな現場で産業用ロボットのティーチング工数を10分の1にするなど、生産効率UPを実現してきた。さまざまな現場での問題解決の方法を知る、産業用ロボットの導入のプロ。コンサルタントは「とりあえず無償相談から」の窓口を設けている。