半導体業界を中心に業界特化型のビッグデータ解析を得意とするオプティマルプラス。インダストリー4.0に取り組むグローバル企業がその技術に注目をしている。ビッグデータ解析の事例や今後の展望などを、来日したシャイケー ゴードン氏に聞いた。
-オプティマルプラスについて教えてください。
オプティマルプラスは2005年に設立され、イスラエルに本社を構える企業です。ワールドワイドで200人を超える社員がおり、エレクトロニクスと半導体分野における専門知識を生かし、ビッグデータ解析のコンサルティングを通じ、コスト低減や品質向上につながるソリューションを提供しています。すでにクアルコム、AMD、ルネサスエレクトロニクスなど大手企業で次々に当社のサービスが採用され、2016年にはチップ、ボード、デバイスなど500億デバイスを解析しています。もともと半導体デバイス向けを得意としていましたが、技術を応用し半導体を実装するシステムやボードなどエレクトロニクス分野にも対象を広げ、インダストリー4.0に取り組む企業を中心に活用範囲が広がっています。
-日本市場にも注目していると聞きました。
日本はモバイルや車載向け製品のシェアも高く非常に巨大な市場です。高品質の製品を作りながらも、さらなる品質や生産性の向上を求めていることもあり、当社のマーケットとして非常に魅力的です。しかし、顧客の要求レベルも高く、当社製品も成熟した段階で投入しないといけないため、アメリカ市場で実績を作ることを優先してサービス開発を進めていました。ようやく本格的に日本でもサービス提供ができる段階に来たと考えています。
-エレクトロニクス業界の課題は何でしょうか?
品質と生産性の両立です。特に車載製品やハイエンドな工業製品など、今まで以上に高い品質と信頼性が求められています。求められる不良率も、従来は100万個に1個レベルだったものが、10億個に1個と桁違いのレベルで要求されています。
そうなると「検査」に関する考え方を変える必要が出てきます。従来は「ウエハテスト」「チップ・ファイナルテスト」「ボードテスト」「システムテスト」など、各検査を行い、NG品を排除するのが「検査」でした。しかし、実際各工程での検査にパスしても最終製品テストをパスするとは限りません。OK部品でもバラツキがあるため、部品が組み合わされた製品全体では、それらのバラツキや相性で全体としてはNGとなってしまう場合があるのです。かといって、各部品の検査を厳しくすると、本来OK品として使えるものでもNG品として排除することになり、生産性が下がります。コスト低減と不良率削減の最適化が大きな課題になってきています。
-解決できた実例はありますか。
当社のソリューションを使い、個別品質を結合した解析をすることで歩留まりを1%向上しながら、生産性を20%向上、さらに検査不良品流出と市場不良品を半減させた実例があります。この例では各検査工程のデータをビッグデータとして蓄積、最終のシステムテストの結果と各部品のテストデータを全て紐づけて解析しました。そうすると、各検査の相関関係が個々の部品レベルで見える化できます。この顧客の例では、ウエハのある特定の場所で製造された部品が、ウエハテストではOKだったのに、最終製品をNGにする要因になっているケースが多いことが判明しました。個々の検査データだけではこのような分析はできません。そしてこのような分析は干し草の中の針を見つけるような作業で、人手では実際不可能です。
-今後の展望をご教授ください。
先ほどの実例にもあるように、何が本当にOKなのかNGなのかを適切に見極める必要があります。検査を厳しくしすぎると本来OKな製品を排除するため、歩留まりが悪くなります。かといって不良品を流出させるわけにはいけません。検査データ、マシンデータ、リワークの実績、MESの情報など包括的製品データを収集し、分析する必要があり、そこに弊社のソリューションが役立つと考えています。
また、工場個々のデータだけではなく、当社のサービスを通じサプライチェーン全体で情報をつなげ、バーチャルサプライチェーンが構築できると考えています。先ほどは工程間の情報をつなげることで、生産性と品質向上を両立できた事例ですが、これを企業間でも行うことでサプライチェーン全体の効率化を進めることができます。解析したデータは当社が厳重なセキュリティ下で管理、解析します。サプライチェーンの企業間では生データではなく結果だけが共有されるので、企業間の独立性も担保されます。
このような当社のソリューションを活用することで、顧客の本質的な意味での高品質と生産性の両立を実現したいと考えています。
◇同社実績や事例詳細:https://jp.cluez.biz/company/page/3366/