富士キメラ総研(東京都中央区)は、IoTの主要構成ツールとして搭載数が増加しているセンサーの世界市場を調査した報告書「2017 センサーデバイス/ビッグデータ・IoT市場調査総覧 上巻:センサーデバイス編」をまとめた。2020年度のセンサー世界市場は、15年度比18.4%増の5兆9755億円になり、生体センサーや熱的・時間空間雰囲気センサー、光・電磁波センサーの伸びが市場拡大をけん引するとしている。
同報告書では光・電磁波センサー6品目、音波・磁気センサー2品目、機械的・物理的センサー7品目、熱的・時間空間雰囲気センサー10品目、ケミカル・バイオセンサー4品目、生体センサー4品目、その他センサー2品目について市場の現状を調査し、将来を予想した。
センサーが小型・低価格化して市場は拡大を続け、ドローンやスマートウォッチなどセンサー搭載アプリケーションの増加にともなって電子機器向けが最も成長すると見られている。特にスマートデバイス向けの圧力センサーや指紋センサーに注目し、医療/ヘルスケア向けに健康管理や予防医学などの用途で需要が伸びる。さらにヘルスケアバンドに搭載される紫外線センサー、加速度センサー、脈波センサーなどにも期待している。
車載部品向けはADAS搭載によるセンシング需要の増加、また自動運転の実現に向けた動きの後押しもあり順調な伸びと予想。特に車載カメラで使用されるCCD/CMOSイメージセンサーなどに注目。IoT対応が活発化するFA/PA向けは、今後は多様なセンサーの活用が進む。社会インフラ向けは新興国での上下水道関連や構造物のヘルスモニタリング用途の需要増加を予想している。
センサー別では、光・電磁波センサーの市場規模が大きく、CCD/CMOSイメージセンサーが大半を占め、今後もドローンやロボットをはじめ搭載アプリケーションの増加により伸びると予想。紫外線センサーは、防災やボイラーなどのUV測定用途が主体だったが、小型化の進展によりスマートウォッチやヘルスケアバンドなどの民生機器向けの搭載が増える。
熱的・時間空間雰囲気センサーは、温度センサー(サーミスタ)が大半を占める。スマートフォンやPC、白物家電、車載部品、情報機器などに搭載され、今後も省エネや高機能化、環境対応目的の搭載が増えるとみられる。湿度センサーやほこりセンサーは中国でのPM2.5対策として空気清浄機の需要が回復し、家庭内の環境モニターの需要が各国で立ち上がり、堅調な伸びが予想される。
機械的・物理的センサーは、仕掛品や部品の高さや幅、厚み、ぶれなどを検知する変位センサーが工場の省人化や効率化などに対応して需要が増加。単価が高いこともあり今後金額ベースでは大きく伸びるとみられる。加速度センサーは小型化、低価格化の進展により幅広いアプリケーションで搭載が広がっている。特にスマートフォンに搭載される6軸製品は数量ベースでは大きく伸びるとみられ、また、気圧センサーや電子コンパスなどの統合による更なる多軸化も想定される。
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センサー別の伸びでは、最も伸びが期待されているのが圧力センサー(民生用途)。20年度には16年度の約2.5倍になると予想。スマートフォン向けが伸びをけん引し、今後もハイエンド端末を中心に搭載数が増え、さらにウェアラブル端末やドローンなどの新規アプリケーションで搭載増加が予想されている。
感圧センサーは、20年度は86%の伸びと予想。今後デジタルペンや電子楽器などの電子機器、車載インターフェース、リハビリ・介護向け製品などの医療・ヘルスケア用途が増える。また、FA/PAや医療介護向けロボットのフィードバックセンサー(調整用センサー)としても伸びが期待される。
味覚センサーは、主に食品メーカーや原料サプライヤーの品質管理やマーケティングなどで利用され、今後の需要拡大が予想される。脳波センサーは、ヘッドマウントディスプレイへの搭載でAR/VRと連携するエンターテインメントや教育、マーケティング、ヘルスケア分野での応用が拡大するとみられる。
指紋センサーは、スマートフォンへの搭載で市場は大きく伸び、ミドルレンジ製品への搭載も増え、さらに車載部品向けの搭載も見込まれている。
RFIDセンサーや変位センサー、紫外線センサーなどの伸びが大きい。RFIDセンサーは、中国メーカーが低価格のRFタグを供給しているため、物流業界や小売業界で導入が進んでいる。今後はロボットと組み合わせた自動化実現の手段として、製造業や医療機関の物品在庫管理や小売業のセルフレジなどで利用が広がるとみられる。変位センサーは、インダストリー4.0などに対応した工場の省人化、生産性向上へのニーズが高く、引き続き伸びるとみられる。紫外線センサーはヘルスケアバンドなどの医療/ヘルスケア用途で需要増加が予想される。