現場感性で市場変化を把握 実態ある攻めの営業が重要
販売員各位に「ディーラーヘルプとはどんなことですか」と問えば、ほとんどの販売員は販売店支援と答える。一般消費者市場に関するものであればその通りである。しかし業務用や産業用の商品市場では、その市場が一般消費市場より小ぶりな故に、ディーラーヘルプは単なるメーカー側の販売店支援というだけでなく、ディーラーヘルプということを一つの組織体(略してDH組織体)として捉えることが肝要なのだ。
もともと役割や環境の違ったメーカーと販売店の組織体となるので、戦前によく編成された連合艦隊のように、それぞれの艦隊を作戦上連合させて指揮系統を一つにすればうまく行くというものではない。DH組織体の底流には同じ釜の飯を食うという信頼関係がなければ力を発揮することはできない。信頼関係を構築しつつDH組織能力を育むことがディーラーヘルプである。
DH組織能力とはひと言で言えば販売戦力である。販売戦力の強化とは販売エリアや狙う業界への人数配置を行ったり、販売員を各種の研修で学ばせたりすることだけではない。世に言う強い軍団とは、実戦を重ねて勝ったり負けたりしながら勝利の味を何度か味わった軍団である。だからDH組織体も一つのチームとして機能し、共に実戦の中をかいくぐり、共に何度かの勝利、すなわち受注を獲得していくうちに強い販売戦力に育っていく。現在のDH組織体としての動きは一応の形を成して動いているようだが、世に言う強い軍団づくりとはなっていないように見える。
昨今、昔から続く老舗と言われる企業が話題となっている。住友や三井あるいは和菓子のとらやなどの例を引きながら、老舗が永く繁栄してきた秘訣に学ぼうとするものである。何度も試練を乗り越え紆余曲折を経て現在に至った知恵が詰まっていると言うのである。
制御部品や機器メーカーと販売店の関係にも歴史がある。知恵が詰まっているはずだ。業界の草創期には互いの利用点を見いだし利用しながらの関係をつくっていた。販売店は顧客を開示し、メーカー側は商品に関するお手伝い程度のことだった。業界の成長期には顧客が増加し、新しい設備が増えた。メーカーの商品の種類や使い方もそれに応じて増え続けた。この時期の互いの関係は生き生きとしていた。と言うのも、一つのチームとして同じ目標に向かって共に戦い、勝利を味わっていたからである。
成熟期に入ってメーカーと販売店の間は一つのチームの関係ではなくなり、メーカーの販売店支援の関係となって安定している。激しい競合状況にあっても、ここ十数年、この業界の大方のメーカーと販売店の国内売上額は、多少のアップダウンがあるものの大きな変化に至らずに、GDPと同じようにフラットに近い推移をしてきた。顧客の取り合いを激しくやっているように見えても、大きな変化がないようなのは、攻めの営業をやっているつもりになっていても、実体は守りの営業になってしまっていることになる。
その理由の一つに、施策はいろいろ出てくるが、メーカーと販売店が個々に動いているからDH活動が実戦に基づいて戦力を向上させる活動になっていない。二つに、個々の販売員は日常的に仕事の話が通じ合う顧客にはめっぽう強いが、話の通じない顧客や見込み客にはめっぽう弱い。したがって激しい競合の中にいても、現状では成熟した安定期の中にいるようなものなのだ。
しかしいつまでも安定期であるわけはない。市場は大きく動いている。この動きを把握するには現場感性は欠かせない。だから多くの目を持っているDH組織体の真の戦力化は欠かせない。DH組織体が生き生きとしていた成長期を洞察する必要があるようだ。