エレコムは、マウスやキーボード、HDDなどパソコンやスマートフォン関連機器、デジタル機器のトップメーカーで、コンシューマ向けだけでなく、オフィス、法人向けにも広がっている。市場では民生用のイメージが強いが、最近は組み込みソフトウェアや産業用コンピュータなどに注力し、産業領域でも存在感を発揮している。
コンピュータ周辺機器からエンベデッドへ事業拡大
同社はOAやパソコン周辺機器メーカとして1986年創業。マウスやキーボード、USB関連、無線関連機器など、コンピュータの広がりとともに成長を続け、直近の16年度決算では、売上高818億4200万円まで成長を遂げた。コンシューマから法人、通信から放送へと事業領域を拡大し、創業以来右肩上がりで成長を遂げてきたが、同社が次の成長戦略として着目しているのがエンベデッドを中心とした産業領域。特に製造業や医療、社会インフラ等に向けた事業を強化している。
ストレージから組み込み機器の開発設計まで、グループ挙げた総合力が強み
産業領域における同社の最大の強みが「総合力」。同社グループには、産業機器向けのストレージのハギワラソリューションズ、組み込み機器の設計・製造を手がける日本データシステム(JDS)、各種コンピュータのカスタムを提供するロジテックINAソリューションズ、汎用品に近いコンピュータを持つエレコムがあり、ストレージなどデバイスから、基板(ボード)、専用/汎用コンピュータまで、各階層における設計・製造メーカがグループを形成している。昨年には各社のエンベデッド関連の開発や営業のスペシャリストを集約した東京テクニカルセンターを開設。横串を刺した体制を構築し、グループのシナジー効果を強化している。
各社の技術を結集したソリューションを提供し、キメ細やかな一品モノから大量生産までユーザーの要望や用途に合わせたカスタム対応が高い評価を得ている。
成長の鍵はエンベデッド。産業領域への取り組みを強化
例えば、ある大手製造メーカから介護ロボットに搭載する専用のIoTゲートウェイ端末の設計開発、製造を受注。別の食品製造メーカからは、倉庫内での品質や工程管理で使うためのタブレット端末の提案を依頼され、防塵防滴や長期供給に対する要求をクリアして受注につなげている。また用途に合わせて部品やハードウェアを選定し、そこに搭載するOSやアプリケーションなどソフトウェアを組み込んで提供するPCのキッティングサービスなども提供している。
今期の売上高は980億円を見込んでおり、将来的には2000億円を目標としている。その鍵を握るのが、同社がエンベデッドと呼ぶ産業領域の成長。技術力に加え、これまで積み上げてきたコンシューマや法人営業の実績と販売網とのコラボレーションで実現したいとしている。