富士電機は、世界最高レベルの低抵抗を実現し、パワエレ機器の大幅な省エネに寄与するパワー半導体「トレンチゲート構造SiC-MOSFET(電界効果トランジスタ)」を開発した。2017年度中をめどに、SiC-MOSFETとSiC-SBD(ショットキーバリアダイオード)で構成するオールSiCモジュールとして製品化するとともに、同社製パワエレ機器に搭載し、さらなる製品競争力の強化を図る。
パワー半導体はウェハにトランジスタを形成するが、その形成方法は「プレーナーゲート構造」と「トレンチゲート構造」があり、電流経路を水平方向に作るプレーナーゲート構造に対し、トレンチゲート構造はウェハに溝(トレンチ)を掘り垂直方向に電流経路を作るため、プレーナーゲート構造に比べてセルの幅を短くでき、同一サイズの素子に対して多くのセルを搭載することで、より多くの電流を流すことが可能となる。
同社では独自の技術により、トレンチゲートの電流のON/OFFを行う「ゲート」の結晶面(電流が流れる面)の電気抵抗を、3.5ミリΩ平方センチメートルに低減。信頼性を損ねることなく、しきい値電圧5Vで世界最高レベルの低抵抗を達成し、プレーナーゲート構造に比べて50%以上電気抵抗を低くすることに成功した。
なお、今回開発したトレンチゲート構造SiC-MOSFET素子を適用したオールSiCモジュールを、インバータ(出力7.5kW、周波数20kHz)に搭載した場合、Si製(第7世代IGBTモジュール)を搭載した場合に比べて、電力損失を78%低減することが可能。