工場内のすべての機器がデジタル通信でつながって情報を共有し、最適な生産を実現するという「スマート工場、つながる工場」。その構想は、数年前から言われて久しいが、現実には、複数の異なるネットワーク、機器コストの問題など課題は多く、いまだ実現されている例は少ない。しかし、IoTやインダストリー4.0の進展にともない、センサレベル、フィールドレベルでも状況が変わりつつある。オープン化が着々と進み、スマート工場への道のりができ始めている。
急拡大するIO―Linkセンサネットワーク実現へ
機器の状態監視や稼働を司るセンサやアクチュエータは、他の機器に比べて使用する数が多く、製品にはコスト感が重要とされる。ネットワーク化が時代の波だからといってデジタル通信機能を追加すると価格が跳ね上がり、ユーザーが買えない、使えない事態になってしまう。そのためセンサ、アクチュエータには通信機能が搭載されてないことが多く、単に測定値や操作値だけを吐き出す単機能に限られていた。
IO-Linkは、そうした課題を解決するために生まれた。IO-Link対応のセンサなどIO-Linkデバイスと、その上に位置して上位の制御機器と通信をするIO-Linkマスタで構成され、これまでの測定値等に加え、センサ自身の状態監視や診断、イベントの通信を可能にし、例えば実際に稼働しているセンサの機器情報を読み取ることができるようになっている。製造現場に何千何万とあるセンサやアクチュエータの情報を一元管理が可能になる。
ネットワーク間の相互連携で競争激化も
ノード数は2014年頃から急速に拡大し、16年には530万台以上に到達。IO-Linkを推進するIO-Linkコミュニティの参加メンバーも増加中。日本でも17年4月にIO-Linkコミュニティジャパンが発足し、現在までに24社が参加するなど、関心も高まっている。
PLCやコントローラなどフィールドレベルでのネットワークは、これまで各規格が独自に存在し、それぞれの対応機器同士による閉じられたネットワークとなっていた。しかしながらIoTやインダストリー4.0の流れによって、シームレスなデータ通信、異なる規格のネットワーク間の情報のやりとりが重要となってきたことにより、異なる規格同士が連携し、相互通信できる仕組みの整備が進み始めている。
16年10月にPROFIBUSとPROFINETを推進するPIと、CC-LiNKの日本CC-LiNK協会の間で、Ethernetを使ったPROFINETとCC-LiNK IE間で相互接続を簡単にできる共同仕様書を策定。それに先立つ7月には、日本電機工業会(JEMA)が提唱するFL-netと、日本ロボット工業会(JARA)のORiNが相互接続を発表。FL-netのコントローラ内にあるデータを、ORiN用PCが使えるようになっているなど、オープン化が進んでいる。
オープン化によって各規格が同じ土俵に乗ることになり、各々の特徴やサポートを含め、競争が激しくなるという意見も出てきている。