矢野経済研究所(東京都中野区)は、設備機器ベンダ、プラント事業者、ITソリューションベンダを対象に実施した「故障予知ソリューション動向に関する調査」を公開した。
近年、AI活用の取り組みが進められているが、Webマーケティング等の商業向けと比較すると、製造・保全分野ではデータの扱いや解析結果に対して高い精度が要求されていることなどから、その開発状況は緩やかなものとなっている。間違いがあった場合、事故等に繋がれば人命にも及びかねないことから、データポイント間の関係性や構造など因果関係を把握することが重要視される点などが、その理由として挙げられる。
故障予知においても、AI活用は注目されているものの、現状では課題も多い。具体的には、過去のデータからAIが異常と判定したとしても、実際の機器は正常に動作している等の「精度の問題」や、仮に故障を予知しても、ブラックボックス型のディープラーニングの手法では原因の特定が難しく、効果的な対策に繋げられない「因果関係の問題」、さらに、予知のモデルを作れたとしても、それを他のモデルで活用できるとは限らない「個別性の問題」が挙げられる。
しかしながら、同研究所では、故障予知ソリューションはまだ萌芽期で、研究が進めば課題も解消されていくとしており、今後、製造業がCPS(サイバー・フィジカル・システム)という、現実世界にある実体とサイバー空間にあるデータとが密接に連携した世界観の実現に向けて動き出し、そうした世界観を実現していくためには、故障予知ソリューションの研究を通じて解明されることも多くなるはずであり、中長期的にみると、故障予知への取り組みは重要な意味を持つと考察している。
なお、製造業でもトップクラスの企業では既にビッグデータを活用した故障予知の研究は進められており、2019年ごろには30社程度、25年ごろには85社程度(いずれも構築社数累計)がビッグデータやAIを活用した故障予知ソリューションを構築する見通しであるとしている。