Smart Factory支援システム「Smart Factory Conductorシリーズ」を展開するFAプロダクツ(東京都港区、貴田義和代表取締役社長)は、既存設備を改造無しで稼働監視できるツールとして、インテリジェントケーブルスキャナ「ICSシリーズ」を発売開始する。
■Smart Factory実現に必要なのは「スモールスタート」
近年製造業では、「ものづくり革新部」「IoT改革室」といった、スマートファクトリー実現に向けての新規部署の立ち上げが相次いでいる。一部の大企業は製造、生産技術、情報システムなど各部署から精鋭を集め、数十人規模の人員と多くの予算を割いて実現に向けて歩を進めている、しかし、そのようなプロジェクト推進ができる企業はそう多くはない。
そもそもSmart Factoryは中小企業が最も恩恵を受けられる潮流だと弊社は考えている。IoT技術を活用すれば、生産現場の最適化が進み、貴重な人的資源を最大限に活用することができる。しかもやり様によっては大規模な投資無しで大きな成果を上げられる。むしろ、現場の意向を無視していきなり大規模システムを入れてしまい、失敗しているケースも多い。成功している企業の多くは現場の意向に沿って特定装置から小規模な取り組みをはじめ、その成功を水平展開している。
■スモールスタートに最適な稼働監視
IoT技術は生産現場では大きく次の4つの活用方法があると考えている。「製造管理→最適な稼働状況の実現」「品質管理→不良を作らない」「在庫管理→納期遅延ゼロと最小在庫の両立」「保全管理→止めない設備と保守コスト削減」である。実は当社でもさまざまなプロジェクトに関わらせていただき、それぞれの実現に際してのハードルやその高さを痛感してきた。
例えば「品質管理」は収集すべきデータ数が非常に多い。また、「不良を作らない」という目的の達成のためには収集したデータから最適解を導きだすためのアルゴリズムが複雑で、実現には多くの知見と時間が必要になる。在庫管理は各工程での管理、既存システムとの統合などが必要で、場合によっては協力会社まで巻き込んだ仕組みの見直しが必要になる可能性もある。保全管理も音、振動、雰囲気など保全現場が培ってきたさまざまな暗黙知の形式知化が必要で、「振動解析からのモーター予知保全」といった、技術として確立されたもの以外はなかなか実用化が進んでいないのが実情だ。
それらに比べ「稼働監視」は非常にシンプルで、設備の運転状況、停止要因が何らかの方法でデータ化できれば実現できる。多少なりとも自動化されている工程であれば、「積層信号灯」「稼働中ランプ」などは標準的に装備されているため、そこに信号が存在する。停止要因もタッチパネルなどに表示される場合もあれば、日報などに記録している場合も多く、それらが一元管理できれば「稼働監視」ができる。また、運転状況、停止要因の見える化が実現できれば、次の改善ポイントが明確になり、稼働率向上が実現できる。
例えば1日1000万円分の生産をしているラインで、5%稼働率が上がれば50万円/日の生産性改善となるため、費用対効果も非常に分かりやすい。
■稼働監視を実現するための壁
とはいえ、そこに信号があるのは分かっているものの、取集するのは容易ではない場合も多々あり壁になっている。設備が古いものや特殊なものであればなおさらだ。PLCで制御されている装置であれば、通信によりデータを収集する手段はたくさんあるが、プレス装置、成型機、NC加工機などは専用基盤で制御されており、外部信号出力の機能を持っていない場合も多い。
また、仮に改造が可能であったとしても、改造することで装置メーカーからの保証対象外になってしまうなどリスクを伴う場合もある。
多くのIT系ベンダーや大手装置メーカーが「IoTプラットフォーム」として、工場の設備から簡単にデータを収取し、稼働監視をはじめとした見える化を実現できるソリューション提案を行っているものの、そのデータの基となる「信号」が取得できないとそのソリューションは絵に描いた餅になってしまう。
■解決策としてのセンサ
そこで弊社は既存の設備から改造無しで稼働信号を取得できる、インテリジェントケーブルスキャナ「ICSシリーズ」を発売する。これは、稼働中ランプ、製品排出センサなどの信号線に洗濯ばさみの様にクランプするだけでその信号が設備に影響を与えず横取りできる製品。使用電力を測る市販のCTセンサをイメージしていただけると分かりやすい。
CTセンサとの最大の違いが、微弱なDC電流を検知できる点。発電所、鉄道などの重要インフラでも使われている技術をFA分野に応用し、専門メーカーと共同開発を行った。そのため、ノイズ対策を含めた信頼性も担保した製品ができたと自負している。
この製品を活用することで、稼働中の設備に手を加えず、古い設備から最新の設備までどんな設備でも「稼働中」の信号があればそれをデジタル化できる。PLCに入力したり、各種IoTゲートウェイに入力したり、活用方法は既存システムや現場の状況に併せて選択ができる。
■センサと稼働監視パッケージ活用の事例
当社ではインテリジェントケーブルスキャナ「ICSシリーズ」の接続先として、「稼働監視パッケージ」も提供を行い、すでに多くの顧客で活用いただいている。これは、入力・表示機能を兼ねたIoTサーバーを中核に据えたシステムで、ICSシリーズをリモートI/Oユニットを介して取り込む以外にも、PLCをはじめとした300種類以上の産業機器用プロトコルに対応、プログラム無しでデータを集約することができる。稼働監視に関連する基本画面データ、演算処理はすでに内蔵されているため信号の割り付けを行うだけですぐに現場に導入できる点が高い評価を頂いている。
パッケージ化を行うことで、50万円からと、ローコストに提供できるうえ、PLCの知識がある方であれば簡単に自由に編集ができるソフトを無償提供しているため、将来的な変更・拡張も自社で運用できる。スモールスタート後の水平展開時には、ハードウエアの追加と設定コピーで対応可能なため、展開するほど低コストにメリットが享受できる。
活用事例としては、持ち運びできる制御盤に「稼働監視パッケージ」と「ICSシリーズ」を入れて「ポータブル稼働監視ユニット」を作った事例が挙げられる。コンセントに接続し、ICSシリーズを該当装置の「稼働中ランプ」の信号線にクランプすることで稼働監視を実現できるため、複数の設備を日替わりで監視できる。停止要因などはタッチパネルでのボタン選択や、市販タブレットからフリック入力で自由記述にも対応できる。
■今後の展望
「日本の製造業を元気にしたい」という想いで、2011年FAプロダクツは創業した。IT(情報技術)とOT(製造技術)両方の知見を活かし、多くの企業に喜んでいただけるソリューションを開発していきたい。
(FAプロダクツ 代表取締役社長 貴田義和)