データ取得、活用で効率化
日本能率協会コンサルティング(JMAC)は、製造業のIoT取り組み実態についてのアンケート調査を実施した。調査は2015年から3回目となり、今回の調査ではIoTの取り組みは活発化し、現場の改善を中心に進めていこうとする傾向があることが分かった。
■製造業のIoT 取り組み状況の実態
始めに「回答者の活動の傾向」について、同社ではIoTの取り組みを3ステップに分類。IoTを導入して現場の課題を解決する「課題解決」、データを活用してスマートファクトリーを目指す「最適化」、最終段階がIoTを使ったサービス化など「価値創造」としている。
どれに取り組んでいるかを聞いたところ、現場中心に課題解決だけ行っている「改善志向型」が最も多く回答者の40%、次いでどれにも取り組んでいない「様子見」が24%、3ステップすべてに取り組んでいる「総合展開志向型」は17%。課題解決と最適化に取り組んでいる「工場最適化志向型」は15%、「価値創造」だけの企業が4%となった。
デジタルイノベーション推進本部 松本賢治本部長は「何かしらIoTの活動に取り組んでいる企業が75%を超え、活動は活発化してきている。また改善志向型が多いのも特徴だ」と話した。
■レベル別取り組み状況 現場の実態把握・課題解決は90%が関心
IoTのレベル別取り組み状況に関して、IoTのファーストステップである「製造現場の実態把握や課題解決」は、実行中・検討中が54%で、検討したいが35%。最適化、スマートファクトリーの実現に関しては、実行中・検討中は31%、検討したいが39%となった。価値創造、新しいビジネスモデルの実現に関しては、実行中・検討中が22%、検討したいが34%、必要ないが30%という結果だった。また昨年の調査に比べて、課題解決で実行中・計画中が11%増加するなど、着実に増加していることも明らかになった。
■データは設備から収集。稼働率改善の解決に期待
課題解決をもう少し詳しく調査し、「IoTでどこからデータを取っているか」を聞いたところ、製造設備が圧倒的に多い82%、その他のユーティリティ設備や従業員(人)、原材料や部品は30%強だった。松本本部長は「製造設備はすでにデータを取れる機能があるものも多く、情報取得の難易度が低い。取るデータもはっきりしているケースもある」と分析している。
次いで「IoTで現場のどんな課題を解決しようとしているか」について、最も多かったのが「人や設備の稼働率改善」の81%、次いで「作業効率改善」が67%、「不良やトラブル原因の追求」が61%、「品質改善」が56%と続いた。主に製造設備からのデータのみでアプローチしようとしていることが分かった。
各課題について取り組みの成果について聞いたところ、「成果感があった」と回答したのは半分以下。活動はしているが成果を出すまでには至っていない。
■スマートファクトリーで製造部門の種々の課題解決を目指す
最適化やスマートファクトリーの実現について、その狙いを聞いたところ、「リードタイム短縮」が73%、「コストダウン」が68%、「少人化」が67%、「品質向上」が64%と回答が拮抗。これについて松本本部長は「製造部門がかかえる多岐の経営課題について、IoT活用でブレークスルーしようという動きが見られる」と分析。
さらに、スマートファクトリーをどこまでやろうとしているかを聞くと、「生産システムの垂直統合」が61%と最も高く、「ロボティクス等による働き方の見直し」が45%と続き、IoTによる工場の最適化が生産部門を中心とした範囲で展開されている。一方で、サプライチェーンの強化や、パートナーを含めた広域なバリューチェーンの構築は45%と構築の意思がある企業は多く、一方で、開発から製造までのエンジニアリングチェーンの取り組みは30%に止まった。
■まとめ 3つの提言
これらの結果を受けて同社は3つの意見を提言。
1つ目は「成果に結び付く、IoTの全体構想・改革シナリオが必要」。経営陣からIoTをやれと言われて現場がやろうとしている例が多く、経営陣も現場もIoTを使って何をどう変革して効果を上げていくかのシナリオが描けていないことを指摘。どんなデータを取得して活用すればこうした効果が出るという仮説を立てることが大切とした。
2つ目は「改革シナリオを効率的に実現するためのデータ取得とデータ活用が必要」。データを集めたはいいが活用できていない例が多く、シナリオを作ったうえでデータを活用していくことの重要性を指摘した。
3つ目は「最適なデータ取得と活用を行うためのIoT技術の見極めと検証が必要」。お目当てのデータを取得するにはどういったセンサーや技術が必要なのかをきちんと見極め、さらにそれを活用するための技術をきちんとピックアップしていくことが必要だとまとめた。