D・Hチームの育成必要 マーケティングの目を育む
マーケットの最前線にいる営業は、種々雑多な役割を持っている。その中でもセリング力(販売力)とマーケティング力はほかに代えられない重要な役割である。機器組み込み部品や製造で使われる機器に携わる営業も例外ではない。
しかし、業務・産業用といわれるこの市場を根城としている昨今の営業は、競合を強く意識し競合に負けないセリング力の強化に励むあまりにマーケティング力を軽視しているようだ。そのようになる理由はいくつかある。
①成熟した市場の中で競合が依然として激しい②企画や事業部などのようなマーケッター部門が強くなった③商品知識やアプリケーション知識が営業力であると理解されている④20年以上もセリング力強化で通してきたが、その間、マーケティング的営業をやった経験のある年代の営業がリタイアしてしまった⑤得意先からの案件の商談化・商談の決着が売り上げを上げる唯一の手段だという信念を崩さない。
以上の理由によって、営業からは市場をつぶさに見てみようとするマーケティング的眼力がなくなってしまった。
一般消費者向け製品市場は、80年代には大量消費・大量生産の時代が終わり、豊かになった成熟社会では消費者嗜好が多様に広がった。そのため製品機能中心の戦術的マーケティングから決別し、顧客満足中心の戦略的マーケティングに移っている。業務産業市場を主戦場とする電気部品・機器商品営業でも、90年代になって顧客満足営業を掲げ活動するようになった。
しかし、かつてのようなマーケティング活動を含んだ動きができなくなっている営業では、顧客満足を戦略的に捉えず戦術的に取り組む方へ向かってしまった。そのため商品機能を武器にして、顧客に役立てようとするセリング力強化になっている。マーケティング活動は、一般消費市場と同様に事業部や企画・商品部といったマーケティングの専門部署に委ねられている。
一般消費市場と業務産業市場とを比較してみると、質・量ともに大きな違いがある。一般消費市場のマーケティングは社会生活をする市民を対象にするために膨大な量の市場である。だから市場をセグメントして、ターゲットを定め、決めた市場でどのポジションを取るかという戦略的な決定からマーケティング活動が始まる。そのため多くの情報が必要になり、専門機関や各種のメディアを使う。だから当初から営業が直接関わる余地が少ない。
一方、業務産業市場のマーケティングは企業と技術者を対象とするため、一般市民に比べればかなり限定的である。一応、業界というセグメントされた市場があり、おのおのの市場から特色のある商品需要が発生する。その需要を具現化し、商品が創出される。
それらの商品は専門用品として企業や業界特有のものもあるが、多くの商品は汎用品となって業界をまたがって業務産業市場を形成している。市場の顧客にはさまざまな業態があって、営業は少しずつ対応を変えている。
業態とは5つに分類され、①動力系機械メーカー②非動力系機械メーカー③プラント系ユーザー④加工組み立て系ユーザー⑤治具専門装置系ベンダーである。顧客となる技術部門にも、製品開発・製造技術・情報システム部などのように特有の現場があり、営業の対応がそれぞれ違う。
以上のように、一般消費市場とは違って営業が直接絡む顧客は多い。したがって、営業は競合に負けないセリング力強化だけではもったいない。刻々変わる現場を捉えるには営業は外せない。それも多くの目が要る。多くのマーケティングの目を育むにはディーラーヘルプチームの育成が必要だ。