矢野経済研究所(東京都中野区)は、市場調査「社会インフラ向けICT市場の実態と展望 2017」を公開した。
16年度の国内の社会インフラIT市場規模(インフラ運営事業者の発注金額ベース)は、前年度比3.2%減の5986億円。鉄道や空港など大きく伸びた分野があった一方で、道路や防災/警察関連での落ち込みが大きく、全体としてはやや苦戦を強いられた。
ここ数年、公共事業費は拡大基調にあり、防災・減災対策や水関連を中心とした老朽インフラ対策、東京オリンピック・パラリンピックおよび訪日外国人客対応も含めた港湾や空港、鉄道、道路などの交通インフラ投資が期待され、なかでもリニア新幹線需要のある鉄道分野への期待は大きく、地域的には首都圏での投資拡大が見込まれる。
これらの点を背景に、公共事業費は五輪開催前年の19年頃まで堅調な推移が予想されるが、20年以降では、社会保障費の増大や財政再建圧力の高まりなどから抑制されていくと推察している。
また、社会インフラITにおいては、IoTやセンサーシステム、クラウド、AIなどを活用した研究が進められており、これらの次世代型社会インフラITは、従来型のIT技術を代替する形で普及が進むが、その場合、逆に高い投資効果によりIT投資コストを抑制していくことになると考えられることから、市場は微減基調を見込み、22年度の国内の市場規模は5720億円になると予測している。
今後は、中長期的に次世代型社会インフラITの採用(スマート化)が進み、それらの中で注目される研究テーマとしては、ITモニタリング、劣化診断支援、予防保全/故障予知などが挙げられ、現状ではそれぞれ研究段階や実証段階にあるとしている。