高い目的ある行動を
つなぐ活動 顧客繁栄に寄与
大河ドラマをヒットさせるには戦国時代と幕末期を放映すれば間違いないと言われている。
両者とも日本の歴史上の動乱期である。一つの秩序が崩れて新しい秩序が誕生する生みの苦しみが動乱期である。平和と秩序の中に生きている市民が、ドラマの中の新秩序をつくろうと奮闘している姿に自らを投影するのだろう。
幕末の動乱は徳川の幕藩体制という秩序が古くなって社会が閉塞感に覆われていた時、外国の脅威が引き金になって起こった。明治をつくった人たちは西欧からの侵略を未然に防ぐには富国強兵しかないという切迫感で突っ走った。幕末には西郷や木戸等が華々しい活躍をしたが、何と言っても国民的人気のナンバーワンは坂本龍馬である。龍馬は富国強兵を海運・貿易でやろうとしたところがユニークであって、人気ナンバーワンの理由であろう。
亀山社中という海運会社を立ち上げた龍馬が遠いかなたに見ていたものは、英国や蘭国のように七つの海へ進出することだった。貿易といっても当時の日本には海外へ売るほど、豊富な物はなかった。だから現代で言うアウトアウトの取引を仲介し、利を稼いで日本を豊かにするのだという志を持って幕末を駆け抜けようとした。
志半ばで倒れた龍馬のあとに続いたのが、亀山社中で共に働いた岩崎弥太郎であった。彼のつくった商事会社が現代では総合商社として世界を駆け巡っている。
商社には総合商社と専門商社がある。総合商社は世界中に情報網を張り巡らせて、あらゆるモノを取り扱う巨大資本の商社というイメージが強い。実は総合商社というものは世界のどこにもない日本独特のものである。総合商社は明治の世から紆余曲折を経て現在のような形態をとり成果を出している。
数社の総合商社以外は専門商社であって、鋼材・化学製品・機械・電気などのように特定分野を扱っている大型の商社である。専門商社も世界各地からの情報を基にして、特定分野のモノの取引からプラント輸出まで手掛ける大型の商社である。
現在の総合商社や専門商社が龍馬の志はともかく、結果的には日本の経常収支に大きく貢献しているのは知るところである。利益額では日本のトップクラスに入る総合商社も、1980年頃までは日本メーカーの生産力の高さや良質のモノに頼って仲介で利を稼いでいた。その後日本メーカーの現地生産や直接販売によって「商社冬の時代」と言われ苦境に陥ったが、様変わりによって見事に乗り切っている。
これも龍馬以来の柔軟性や商社に根ざす挑戦性、命綱にしてきた国内外の現地情報の質量の多さや収集力が基になっていると思われる。
現在、業務産業市場で活躍中の部品・機器販売商社は、規模や組織力の面でまだ専門商社という範疇(はんちゅう)には入っていない。メーカーとユーザーの仲介をなりわいにする販売店の範疇である。近年、これらの中に海外進出やマーケティング部を強化して専門商社の道を行く販売店も出てきた。やがて多くの販売店も発展して専門商社への軌跡をたどるだろう。
なれば龍馬の亀山社中も小規模だったが高い志を持って活躍したように、龍馬の志の一端は受け継ぎたいものである。国のためという大げさなものではなく、高い志とは高い目的ある行動のことだ。
それぞれの立場での高い目的は違う。しかし販売店であるなら目的へ向かう行動の根底には顧客の繁栄があるはずだ。顧客は新しい需要を模索し取り組むだろうし、新しい製造に挑戦するだろう。今年はそれらの実現に向ける活動が活発になる。
販売店は、そのような顧客に得意な商品を積極的に提供するだけでは顧客繁栄の営業にはならない。多くの現場を足で稼ぐという利点を生かし、入手した関係ある情報を伝え、つなぐ活動が顧客繁栄に寄与していくことになるのだ。