皆様、新年明けましておめでとうございます。
年頭に当たり、平素より日本機械工業連合会にお寄せ頂いております皆様方の温かいご支援とご協力に対し、改めて深く御礼申し上げます。
我が国機械産業全般の動向を見ますと、日機連の「機械生産見通し」においても、今年度の国内機械生産は、前年度比5.5%増と、この7年間で最大の伸び率が予想されるなど、国内外の景気動向を反映して総じて堅調な状況が続いております。昨年度のマイナス成長に対して今年度はほとんど全ての業種において増加基調にあり、こうした状況が新年度の4月以降も継続することを強く期待するところですが、労働需給のタイト化も気になるところです。
いざなぎ景気を超えるアベノミクスの5年間にわたる景気回復のなかで、280万人の就業者の増加に伴い、失業率はバブル崩壊以降最低の水準となりました。人手不足の影響が大企業/中小企業、また地域を問わず日増しに高まっていることを、多くの皆様が実感しておられることと思います。
こうした労働需給のトレンドは、今後のわが国経済の状況並びに我々機械産業の行方を左右する最も重要なポイントになるのではないかと感じております。少子高齢化のなかで、今後のわが国の「労働力人口」は、10年後には約8%の500万人の減少、そして20年後には約16%の1000万人以上の減少が見込まれるとも言われております。こうした予測値は、ワークライフバランスの改善等の取組みによってある程度変化するものではありますが、人手不足がわが国経済にとって最早構造的な課題であり、労働需給が構造的にタイト化してきていることは抗うことのできない潮流ではないかと考えます。
こうしたなかで、政府におかれても昨年12月に、『新しい経済政策パッケージ』を取り纏められ、「少子高齢化という最大の壁に立ち向かうため、生産性革命と人づくり革命を車の両輪として、2020年までの3年間を集中投資期間と位置づけ、取組む」との方針が打ち出されました。また、このための対策の一環として、一定の賃上げや人材育成、設備投資を前提条件とした法人税率の引下げ措置の導入が決定されたところであります。構造的な労働需給のタイト化を前にして、人手不足を成長の隘路としないためのこれまでにない創意工夫が求められていることは論を俟たないところです。
労働需給のタイト化は、機械産業にとって二重の意味を持っています。取引企業や自社の生産現場での人手不足に如何に対応するかという自らの課題の一方で、顧客への機械及びシステムの提供を通じて、ユーザーの省人化、生産性の向上に貢献するという立場です。人件費の上昇圧力の下で、企業がコスト競争力を維持する為には、相当程度の省力化投資を進め、生産性改革の実現に本気で取組む必要があります。日機連におきましても、こうした動きを促進すべく、所要の税制の実現につき、関係方面への要請を行ってまいりましたが、そうしたなかで償却資産向け固定資産税課税の改善、IoT関連税制の創設、省エネルギー税制の創設等、投資を円滑化するための一連の税制が実現することとなりました。人手不足のなかで製造業、サービス業を問わず所要の投資を進める上で、今回の決定は、時宜に適ったものと考えており、機械ユーザーサイドでの制度の積極的な活用を強く期待しております。
加えて、イノベーションを活用した生産性革命への取組みは、わが国のみならず、世界各国において喫緊の課題として認識されております。私が併せて会長を務めておりますRRI、ロボット革命イニシアティブ協議会が経済産業省とともに昨年11月末に開催致しました国際シンポジウムにおきましても、ドイツ、アメリカ、中国、スウェーデン、チェコなど各国からの代表者が参加し、非常に強い問題認識のもとで、IoT革命を巡って極めて活発な議論が行われました。また、米国のIIC、インダストリアル・インターネット・コンソーシアムからの要請もあり、RRI-IIC間での連携協定の締結を発表致しました。今年前半からも具体的な連携活動が開始される予定であります。このシンポジウムに参加して、私は、取組むべき課題が山積しており、かつグローバルに共通していること、そうしたなかで課題解決に向けた各国間のコラボレーションが強く期待されていることを改めて痛感致しました。
スマート・マニュファクチャリングに関する国際標準化に向けた取組みも今年はIEC中心に加速していくものと思われます。国内の取組み体制も充実が期待されるところであり、関連する工業会のご協力をいただきながら、わが国がこの面でも積極的に貢献できる立場に立てるよう取組んで参りたいと思います。
皆様の一層のご健勝とご活躍を心から祈念申し上げ、新春のご挨拶とさせていただきます。