【2018年年頭所感】日本ロボット工業会 会長 稲葉善治「業界の活性化をさらに推進」

新春を迎え、謹んで新年のお慶びを申し上げます。

さて、昨年はナショナリズム、あるいは反グローバリズム的動きが収まらず、社会の分断が拡がる様相もあり、国際社会の不安定さが目立つ1年でした。そして、この新年は、北朝鮮問題、エルサレム問題、カタルーニャ独立問題など引き続き多くの不確定要因を抱えたなかでの幕開けとなりました。

世界経済についてみますと、米国では実体経済が堅調であるとともに、ユーロ圏では金融環境の緩和やドイツやフランスにおける政治リスクの低下、さらに中国では高水準での公共投資等、おしなべて世界経済には底堅さがみられます。

ひるがえって我が国経済は、政府の経済政策効果もあって欧米に比べてペースは緩やかではあるものの景気は拡大しています。その中にあって、特に私どもロボット業界にとりましては、こうした景気回復下で少子高齢化による人手不足感の拡大と併せ、2015年に取り纏められた「ロボット新戦略」での政策目標と、それに伴う各種施策に支えられ、ユーザー側での需要意欲の高まりが見られました。

このような状況の下、我が国のロボット生産は、国内需要での堅調な伸びとともに、需要の約7割を占める輸出環境が中国を中心として大幅な伸びとなったことから、17年は対前年比28%増の約9000億円を見込んでいます。

そして18年の今年は、政府において「生産性革命」実現に向けて、3%以上の賃上げと安定した設備投資、人材投資の強化を行う企業やIoT投資(ソフトウェア、センサ、ロボット等を連携した投資)に積極的に取り組む企業への法人税減税が計画されています。こうした政策による国内投資の加速化が国内での需要増に繋がることを期待しております。

さらに、海外においても引き続き中国での高い自動化投資意欲をはじめ、アジア及び欧米での更なる景気拡大による需要の拡大が期待されています。

このようなことから本年のロボット生産額につきましては、対前年比11.1%増の業界初となる1兆円に、また受注額においては1兆1000億円に達するのではないかと期待しております。

このような中、当業界としては中長期的視点に立った業界の活性化をさらに推進する必要がありますが、昨年に引き続き以下の3点を重点項目として取り組む所存です。

第一は「市場拡大に向けた取組」です。

ロボット新戦略での「世界一のロボット利活用社会の実現」を目指し、当会ではロボット革命イニシアティブ協議会との連携のもと、「ロボット利活用推進WG」の活動を事務局として引き続き支援して参ります。そしてここで検討されている20年に向けてのロボット活用の裾野拡大に向けたマッチング活動、人材育成及び環境整備について具体的成果に繋がるよう引き続きその役割を積極的に担ってまいります。

また、ロボット利活用推進にとってシステムインテグレータ(SIer)の役割は極めて重要です。そのSIerがより一層能力を高めて健全に発展していくためには、業界における取引慣行の改善やSIer同士の連携・協業に対する取組が重要であるとの認識のもと、現在、全国のSIerの組織化に向けた取組を具体的に進めており、年内の立ち上げを目指して参ります。

第二は「イノベーションの加速化に向けた産学連携の推進」です。

競争力をベースとしたグローバル市場での優位性確保や今後のAI及びコネクテッド・インダストリーズを通じた潜在市場の顕在化を図るうえでも、イノベーションの加速化を通じた市場の獲得・拡大が急務となっています。特に、欧米先進国での技術革新に加え、中国をはじめとする新興国でのロボット技術のキャッチアップは目覚ましく、我が国としてもイノベーションの加速化を図るためにも、引き続き日本ロボット学会をはじめ関係学会及び関連業界との連携に努めて参ります。

第三は「国際標準化の推進、国際協調・協力の推進」です。

国際標準については、欧米が市場の獲得手段として戦略的に取り組んでいますが、引き続き我が国も官民挙げての取り組みが重要です。特に本年6月には、ロボットの国際標準化について審議しているISO/TC299の第2回総会及び関係するワーキンググループの会議が、京都市で開催されることとなっており、国際標準化活動に対しては、ロボットのリーディングカントリーとして引き続き積極的に取り組むこととしております。加えて国際ロボット連盟の活動とも併せて、国際交流を積極的に推進していく所存です。

また、本年は6月6日~8日に例年同様「実装プロセステクノロジー展」を開催致します。加えて10月17日~19日には、隔年開催の「ジャパンロボットウィーク2018」を開催することとしております。特に、本年はジャパンロボットウィークの開催に併せて、経済産業省及びNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)主催による「World Robot Summit」のプレ大会が開催されます。20年開催の本大会前のプレ大会では、世界の英知を集めてロボットの競技会と最新のロボット技術を展示するもので、5日間にわたって開催されます。

これらの展示会及び競技会等を通じて技術情報の発信とともに様々な分野へのロボット利用拡大への意欲を喚起することに加え、市場調査、技術振興等の各事業を意欲的に展開する所存です。

引き続き関係各位の一層のご支援とご協力をお願い申し上げますとともに、会員各位のご活躍とご発展を祈念いたしまして、新年のご挨拶とさせていただきます。

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