関東経済産業局、ロボットSIの実態調査 解決すべき3つの課題

関東経済産業局地域経済部情報政策課は「ロボットシステムインテグレータ(ロボットSI)に関する調査結果」を発表した。調査は、2017年6月から7月にかけて全国のロボットSI374社に対してアンケート調査で行われ、38%となる144社から回答を得た。ロボットSIが直面している課題として、引き合い増加に対して利益率が上がらない、エンジニア不足と採用難、ユーザーのロボットSIに対する認知度と理解度の低さが明らかになった。

 

課題①引き合い増加も利益確保に苦心

ロボットSIに来る引き合いの数は「増加している」が73%。引き合い元として自動車や電機(34%)、3品産業(18%)、その他製造業(17%)と、工場関連で69%を占めた。引き合い元の事業規模は大企業(39%)、中小企業(37%)がほぼ同じで、中小企業でも関心が高い様子。

しかしロボットSIビジネスとして見ると、引き合いが増加し売り上げも伸びてはいるが(61%)、利益率は横ばいが50%。

その原因について「エンジニアの社会的立場が低く、工数単価が非常に低い」「受注単価はリーマンショック後から上がっていない」「検討費用は無償がほとんど」「客先要求仕様と実行予算が見合っておらず、利益率を下げて受注することが多い」「提案、相談案件が多い」「引き合いは多いが、決断までが長い」「ユーザーは既製品感覚で見ていて、システム構築に対する認識が不足している」などの意見が集まった。

 

課題②エンジニア不足 採用難も

ロボットSIの90%以上がエンジニア不足を感じており、ビジネス機会の損失、今いるエンジニアの労働環境の悪化、品質低下を招くかもしれないと危機感を感じている。

特に不足している人材は、20代~30代の若手、40代の企画や仕様定義ができる人、プロジェクトリーダーなど各社各様。スキルも機械設計、電気設計、画像処理などさまざま。

それに対しエンジニアの確保は、新卒とキャリア採用の両方を募集し、ツールとして人材紹介や自社ホームページ、ハローワーク等で利用している。しかし、企業の60%強が採用状況に不満とし、その理由を応募者が集まらない、技術と経験のミスマッチがあるなどとしている。今後も採用を減らすつもりはなく、75%以上が今以上の人員増を計画している。

 

課題③未整備の業界 まとまる必要性

ロボットSIの業界活性化、魅力向上のために必要なことを聞いたところ、「業界の認知向上」「国家資格化などスキルや実績の可視化」「ユーザー教育の強化」などが上がった。

「技術レベルに応じた価格で受注できる環境が必要。給与や労働環境の向上を図らないと若い人がエンジニア職を希望しない」「ロボットSI=すごいことができる集団、社会に必要とされる人たちという認知度向上」「人材確保のため、国家資格を含む待遇の改善、技術向上のためのロボット等の貸与」「SIのレベル認定などを割く指定、ダメなコスト競争をしない環境を作っていくことが必須」としている。

 

【解説】

日本ロボット工業会によると、18年のロボット生産額は17年の11%増となる1兆円に達すると見込み。旺盛な需要に対してメーカー側も供給体制を整えているが、懸念されているのが、その納品体制。ロボットはユーザー先でのシステム構築が必要となり、それを担当するロボットSIの数が絶対的に不足している。受注してもシステム構築して稼働するまでに時間がかかるといった事態が想定され、ロボットSIが一番のボトルネックになるとも言われている。

ロボットSIを増やそうという声はあるが、実際には今回のアンケートのようにロボットSIが十分な利益を取れていない実態がある。ロボットSIのほとんどがエンジニア10人程度の中小企業であり、事業拡大はなかなか難しい。また新規参入に関しても、工場設備、生産工程への理解、ロボット制御など専門知識と技術が必要とされハードルは高い。

ロボットSIは仕事としても新しく、世間的な認知度は低い。しかも機械と電気、ロボット制御など専門的な知識と技術が必要とされ、職業としても入り口が狭く高く、人材確保が難しい。それを解消するための活動に関しても、ロボットSIは組織化されておらず、各自バラバラで統一した情報発信や影響力拡大は難しい。来年度中にロボットSIの組織化が予定されているとされ、そうなると環境も変わると見られている。

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