「知財権」取得や「取り締まり申請」が効果的
新興国、特に中国やアジア地域では、日本や欧米各国の製品を模した模倣品やコピー品、海賊品が横行し大問題となっている。主にキャラクター製品やデジタル機器、デジタルコンテンツなどの被害がよく知られているが、自動化ニーズの高まりにともない、制御機器にもその実害が及び、看過できない状況になってきている。国や業界を挙げた対応に加え、メーカー、流通における個別対策も必要性が高まっている。
■模倣品被害と世界の被害状況
特許庁によると模倣被害とは、特許や実用新案、意匠、商標、著作権などの知的財産権を侵害した製品・サービスが、製造・販売などされることで利益を損なう可能性がある被害のこととしている。具体的には、①ブランドロゴが盗用された偽ブランド品の流通、②真正品のデザインやパッケージがそのまま模倣されたデッドコピーの流通、③ライセンス許諾を受けずに半製品や付属品などの非正規品が作られ、格安で売られているケース、④製造や加工技術が不正に盗用されているケース、CDやDVDなどの海賊版・違法コピーなどと定義されている。
OECDによると、世界の模倣品・海賊版の流通総額は、13年時点で約4600億ドル(50兆円)。世界貿易総額の2.5%が模倣品によるものとしている。国際商業会議所では、今後、模倣品・海賊版の規模は世界的に拡大すると予測。22年には、13年の流通額の2倍以上となる9910億ドルに達すると見込んでいる。
■日本製造業の被害状況
特許庁がまとめた「2016年度模倣被害実態調査報告書」によると、模倣品被害が受けたとする日本の製造業企業は、回答企業1201社のうち330社で27%だった。模倣品の製造国、経由国、販売されていた国は、いずれも中国が最多。韓国が続き、台湾では模倣品の販売も目立っている。
模倣品の品質と価格は、ほとんどが真正品よりも品質は低く、価格は安め。模倣品を発見する主なきっかけは、「代理店やディーラー、顧客、得意先などからの通報」と「インターネット上での発見」。正規のモールサイトや通販サイトでも模倣品が掲載されているケースも多い様子。
模倣の主な手口は、「見た目はそっくりに作り、商標を付けないで販売」が最も多く、「中身と包装、シールなどを別々の場所で製造し、販売時に合わせる」「正規品を表す識別シールを模倣して添付」というケースも増えている。
■模倣被害への対策状況
模倣品への対策について、対策をしている製造業企業は約半数の54%。対策費に関しては、「100万円未満」が22%、「100万~500万円未満」が21%、「1000万円以上~3000万円未満」が16%となった。
実施した対策で効果があったものは、「知的財産権の取得」が最も多く、「弁理士や弁護士など専門家への相談」、「製造と流通の現地侵害調査」、「製造者・販売者への警告」、「税関や警察などへの取り締まり申請」が続いた。インターネット上の被害に対する実施対策では、「知的財産権の取得」、「模倣品の販売監視強化」が多く、「ISPへの相談」、「製造者・販売者への警告」、「弁理士や弁護士など専門家への相談」なども効果ありとされた。
また1社だけでなく、企業間連携も効果的とされ、「情報交換」や「現地での被害調査」、「現地政府や取り締まり機関への要望・意見交換」を行う企業が多くなっている。
調査詳細は、特許庁ホームページ模倣被害実態調査から。
https://www.jpo.go.jp/shiryou/toukei/mohou_higai.htm