【電磁開閉器特集】半導体・工作機械向けが好調

電磁開閉器(マグネットスイッチ)の市場は、主力需要先である半導体製造装置、工作機械の好調な生産を受け、販売が大きく伸びている。新市場として電池関連も期待されており、今後は都市再開発やオリンピック・パラリンピック需要が本格化してくることでさらなる伸長が見込まれている。生産も順調に展開されていることで、納期も計画的に進捗しており、大きなトラブルにはなっていないことで、メーカー各社の売り上げも計画どおり進展しており、利益も銀や銅などの素材価格も比較的安定していることからしっかり確保できているところが多い。

今後、ⅠoTに絡んだ情報化投資の拡大も見込まれ、さらなる上昇基調が期待されている。製品は小型・薄型化、低消費電力化などをポイントにした開発が継続しているが、製品選択を容易にする工夫も進んでいる。

 

IoT、電池も期待

電気回路の開閉制御を行う役割を果たす電磁開閉器は、電磁石で接点を開閉する電磁接触器(コンタクタ)と、電動機の過負荷保護を行うために熱を利用して動作する熱動型過負荷継電器(サーマルリレー)を組み合わせている。モータなどを使用した機械、装置、設備には必須の機器として使われ、負荷のON/OFFや、過負荷電流が流れて機器の回路が焼損する事故を防止する大きな役割を果たしている。

工作機械、半導体・液晶製造装置、エレベーター、鉄道機器、船舶、空調機器、PV(太陽光発電)システム、配電盤など幅広い分野で、モータの起動・停止、照明・ヒーターなどのON/OFFなどで使用されている。

日本電機工業会(JEMA)の出荷統計によると、2017年(1~12月)の出荷額は前年比108.2%の290億2600万円となっている。16年がPV向けの不調もあり減少したが、再び上昇基調に転じている。直近9カ月(17年4月~12月)では前年同期比112.6%と2桁の伸びとなっており、堅調な推移を見せている。

主力需要先の工作機械の出荷は依然好調を維持している。17年の出荷額が前年比131.6%の1兆6455億円と過去最高になっており、18年も1兆7000億円と2年連続の過去最高更新を見込んでいる。ボールねじやスライドといった部品の納期が長期化の様相を呈してきていることから、受注に比例した出荷ができるかが懸念されている。

もうひとつの大きな需要先である半導体・FPD(フラットパネルディスプレイ)製造装置も好調で、17年度は前年度比121.9%の2兆4996億円となる見通しで、18年度も108.3%の2兆7072億円が見込まれており、2兆円市場が継続する。ⅠoTに絡んだ情報化投資や自動車の自動運転などをはじめとして半導体の需要は急増している。スマホの有機EL画面や、高画質テレビなどの伸長で液晶などのFPDの需要も旺盛な需要が継続している。

人手不足や人件費の上昇、製品の高精度化などからロボットの市場も急拡大している。日本ロボット工業会の見通しでは、17年の生産額は前年比128%の9000億円乗せとなっており、18年はさらに上乗せされて1兆円を突破し、1兆1000億円も見込めるという大きな期待感が出ている。

さらに、ここ数年期待されながらも実数字では出ていなかった東京、名古屋、大阪をはじめとした大都市圏を中心にした都市再開発や、東京オリンピック・パラリンピック需要が今年は実需に加わることが見込まれ、需要はさらに拡大することが予想される。設備の老朽化や省エネ化対策などの既存のビルリニューアル化で、エレベーターやエスカレーター、空調設備向けの受配電機器は買い替え需要が発生することは確実で、電磁開閉器にも波及効果が見込まれる。

そしてここ数年、電磁開閉器の新需要をけん引してきたPV関連が一服する中で、ⅠoTの活用に伴う情報化と情報量の増大に対応したデータセンター向けの需要や、蓄電池やEV(電気自動車)向けも新たな電磁開閉器市場として期待が高まっている。データセンターは大電流を使用することから省エネや熱対策上からも電磁開閉器の果たす役割が高まりつつある。

そのほか、鉄道、船舶関連も期待の市場で、一般的に直流(DC)電力で使用されることから、DCタイプの電磁開閉器の市場として注目されている。特に、鉄道車両は海外市場に向けた輸出の需要が今後も継続することから電磁開閉器の安定した需要先として注力しているところが多い。

 

注目のプッシュイン式

電磁開閉器は技術的に完成の域にあると言われながらも、依然開発・改良が進められている。最近のポイントは小型化、省エネ化、グローバル化対応、省配線化と配線作業性の向上、安全対策などに重点が置かれている。

小型化への取り組みは、制御盤の小型・薄型化に対応したもので、10Aフレーム以下の小容量タイプでは、横幅36ミリを実現して、収納スペースの削減と、駆動電力の低減を図っている。電磁開閉器の小型化には、開閉時の高温ガス放出構造やアークランナーの形状最適化など設計上の難しさが伴う。しかし、多数個並列して使用することが多い電磁開閉器では一個の幅を少しでも削減できれば、盤全体では大きなスペース削減効果を生み出す。

同時に、小型化・低消費電力化は、環境配慮と素材の節約にもつながる。電力消費量の削減では、電磁石の改良も行っており、電磁石容量で約15~30%の省電力化を実現している。

しかし小型化を進める上では、開閉時に発生するアーク対策も技術上の課題になる。アーク対策を行いながらアークスペースを削減するために各社独自の消弧構造を採用して、省スペース化と安全性、確保に取り組んでいる。

省配線化と配線作業性の向上では、端子の配線ネジを外さなくても配線できるようにしたり、バネを使って仮止めが容易にできるようにしたりと、工夫している。端子構造は、日本と海外では異なっていることから、使われる地域の実状に応じて選択できるように、棒、先開き、丸型、スプリング、ファストンなど多彩に用意している。

作業性の良さでは欧州タイプの圧着端子を使わないで、棒線、より線がそのまま使用できる接続方式が有利と言われているが、日本では電力や官公庁向けで、圧着端子の使用を求めているところが多く、納入先ごとに仕様を変えているのが実状だ。

電磁開閉器でも欧州式のプッシュイン構造の配線方法が開発され発売されてきている。プッシュイン式は作業性の良さ、信頼性が確立してきており、今後大きく変化することも予想される。

省配線化の一環として、電磁開閉器の主回路の高さを統一することで、専用ブスバーによる一次側渡り配線ができるようになっている。これにより、配線数が大幅に減らせ、配線作業時間の短縮と誤配線の防止につながる。ブスバー設置状態はむき出しになっているが、このブスバーにメッシュ状のカバーで覆って安全性の向上を図る動きも見られる。

さらに、可逆型電磁接触器に、電気的インターロック用配線を内蔵したタイプも開発されており、インターロック配線が不要になるほか、スペースもほとんど同じで済むため、内蔵スペースを有効に生かせる。

 

DCタイプの普及期待

安全対策では、端子部に不用意に接触しないように感電防止構造を採用した製品が一般化、不用意な接触によって誤作動したり、異物が本体に侵入したりしないように保護カバーを標準で装備している。

さらに、制御回路と主回路の誤配線を防ぐために、それぞれの端子色を変えることで分かりやすくしたり、主回路と補助回路の端子配線の干渉防止と作業性向上へ端子配列を工夫した設計も行われている。

電磁開閉器の接点溶着が発生した場合でも、安全開離機構(ミラーコンタクト)として、補助接点が確実に作動する機能も内蔵しており、事故の防止を図っている。

最近は、PVやEVなどで電力効率が良いDC機器に注目が集まっている。しかし、DCは交流(AC)より接点への負荷が高いことから低圧での使用が多かったが、昨今はDCの高圧にも耐える電磁開閉器が普及し始めており、DC1000Vに対応できる製品も開発されてきている。鉄道車両、船舶、EVの普及に伴うバッテリも含めた充電システムでDCタイプの電磁開閉器の普及が急速に進むことが予想される。

一般的に電気回路には、配線用遮断器、電磁接触器、サーマルリレーが使われ、短絡事故からの電線保護、電動機の過負荷保護などを行っているが、これらの省スペース化と省配線化を実現できるモータスタータの動向が日本でも注目されている。配線用遮断器、電磁接触器、サーマルリレーの代わりに、モータブレーカと直流低消費電力型の電磁接触器を採用することによって取り付け面積を、従来の3分の1まで削減することができる。

モータブレーカと電磁接触器を専用パーツで一体化しているために、従来の配線用遮断器と電磁接触器を電線1本1本で配線する作業も不要になり、配線時間を従来の半分に削減することが可能になるなど、トータルコストダウンに効果を発揮する。欧米を中心にこの方式が普及しているが、日本では配線方式や電圧の違いなどからあまり普及していない。しかし、日本から海外市場に向けて輸出する機会が増加する中で対応が求められており、関連メーカーは計算方法など実際のマニュアルなどを準備しながら対応を図っている。

電磁開閉器市場は、ピーク時には国内で約400億円の市場を形成していた。海外生産移管や単価の下落などから数量は過去最高を更新しているものと見られるものの、金額は減少している。しかし、IoT関連や電池、ロボットな今後需要増が見込める市場が生まれてきていることから、再びピーク超への期待が高まっている。

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