HMSインダストリアルネットワークスは、2018年版の産業用ネットワーク市場シェアの分析結果を公開した。FA分野の新規設置ノード数において、産業用Ethernetが52%、フィールドバスが42%となり、産業用Ethernetがフィールドバスのシェアを初めて上回り、大きな転換期となった。17年に最も多く設置されたネットワークはEthernet/IPで、PROFINET、PROFIBUSが続いた。また近年注目されている無線ネットワークについても、市場シェア6%まで広がっている。
設置最多はEthernet/IP
■産業用Ethernet-産業用IoTで成長
産業用Ethernetはフィールドバスよりも速いスピードで成長しており、今回の調査で初めてフィールドバスのシェアを上回った。22%の成長率で拡大し、昨年の46%から52%を占めるまでになった。
中でもEthernet/IPが市場の15%を占め、最も大きなシェアを有し、PROFINET、EtherCAT、Modbus-TCP、Ethernet POWERLINKが続いている。
同社のハンソンCMOは「産業用Ethernetへの移行は、高性能に対するニーズ、工場設備やIT/IoTシステム間の統合、全体的には産業用IoTの高まりに後押しされている」と分析している。
■フィールドバス健闘も減少見込み
特定業界の後押しやサイバーセキュリティの懸念もあり、フィールドバスも成長は続いている。しかし成長率は6%にとどまり、導入数は徐々に減少していく見込み。PROFIBUSが12%と最大のシェアとなり、Modbus-RTUとCC-Linkが6%で続く。
■急成長するワイヤレス
ワイヤレス技術は32%の成長率で成長し、市場全体の6%に達している。WLANが最も普及し、その後をBluetoothが追っている。「ワイヤレス技術は革新的なオートメーションアーキテクチャの実現のために機械メーカーやシステムインテグレーターにより導入が進んでいる。ユーザーは、ケーブル配線を減らし、タブレットやスマートフォンなど私有デバイスの活用など、接続と制御の新たなソリューション構築を実現している」(ハンソンCMO)。
■地域ごとシェア アジア混戦模様
欧州や中東では、PROFINETとEthernet/IPがリードしており、PROFIBUSもまだ広く使われている。他にもEtherCAT、Modbus-TCP、Ethernet POWERLINKがよく使われている。
米国ではCIPネットワークが支配的であり、Ethernet/IPへの移行が明確になっている。アジアは突出したネットワークがないものの、PROFINET、Ethernet/IP、PROFIBUS、EtherCAT、Modbus、CC-Linkが広く使われており、Ethernet系のCC-Link IE Fieldが勢いを増している。
■過去5年の産業用ネットワーク推移
過去5年の推移を見ると、14年時点ではフィールドバス71%、産業用Ethernetが29%と大きな開きがあったが、産業用Ethernetが急成長を続け、16年時点でフィールドバス48%、産業用Ethernet46%と肉薄していた。今回、17年に市場シェアで初めて産業用Ethernetがフィールドバスを逆転した。
同社は「産業用Ethernetがついにフィールドバスを追い抜いたというのは興味深く、Ethernet/IPが市場をリードするネットワークとなった。それでもネットワーク市場は依然として細分化されたままであり、ユーザーはアプリケーションによってさまざまなネットワークへの接続性を求めていることがわかる。産業用IoTやインダストリー4.0に後押しされる形で、この先産業機器がますますネットワーク接続されることは明らかだ」としている。