先日、厚生労働省に招かれ、東京都小平市の職業能力開発総合大学校を訪問した。高度なものづくり人材や技能指導員の育成を目指す学校で、卒業後は6割が民間企業へ就職し、4割が全国の就職支援施設等で指導員として飛び立っていくそうだ。いわば「ものづくり道場の総本山」。メーカーの製造現場とはまた違ったアプローチで技術を磨く場を体験でき、とても興味深かった。
▼最初に訪れたのは機械科の実習室。汎用旋盤が何十台と並び、機械の前には真剣な顔をした学生たちが慣れた手つきでワークを削っている。さすがは道場だけあり、5Sは完璧。ところどころに女性の姿も見かけた。整然とした現場に感心する一方、学校だけに最新のNC機械を使っていると思っていたので、ちょっとだけ驚いた。しかし、先生の説明を聞き、その理由に納得。いわく「NCでやれば簡単だ。しかし技能を自分の手に覚えさせ、加工と機械の理論や仕組みを頭にたたき込ませた上でないと、適切な数値を導き出すことはできない。機械をうまく使うためにも基本が大切。特に指導員を育成するという意味では、なおさら基本が大事だ」とのこと。自らの不見識を恥じた。
▼見学後、現役の学生と話す機会があった。厳しくても充実した時間、高度な技術と心得を身につけているせいか、自信たっぷりの良い目をしていた。一般的な大学ではなく、なぜこの学校を志望したのかを聞いたところ、子供のころから工作が好きだった、親が技術者だったなど、子供のころからものづくりに親しみ、楽しんできた土壌があった。他の大学に比べて休みが少ない、実習が多くて大変だといったことを口にする学生もいたが、その顔を見るとまんざら嫌でもなさそうだ。逆にその環境を楽しんでいる風でもあり、それが彼らの自信になっているのだろうと勝手に思った。若い人がものづくりや製造業を楽しそうに語る姿は見ていて元気になる。こうした姿が日本全国で見られる世界を作っていきたい。