アジアで進む協働ロボット導入
富士経済は産業用ロボットの世界市場調査をまとめた。世界の産業用ロボット市場は2025年に3兆3140億円まで達し、17年に比べて3.1倍の市場規模になると予測。協働ロボットは、中国やアジアが伸び、17年の12.1倍となる5900億円まで拡大すると見込んでいる。
■17年の産業用ロボット世界市場
17年の産業用ロボット市場は、労働力不足や人件費高騰を背景に自動化ニーズが加速。16年比23.7%増の1兆821億円となった。
組立・搬送系ではEMSやスマートフォン、自動車関連を中心に小型ロボットが拡大。協働ロボットは自動車やエレクトロニクス関連の大手企業を中心に進んだ。
溶接・塗装系は、欧米や日本、中国で自動車関連の設備投資が増えて好調だった。
クリーン搬送系は、高精細液晶や有機EL関連の設備投資の増加によりガラス基板搬送ロボットが伸びた。特に東南アジアのスマートフォン関連の大型投資で需要が増加した。アクチュエータ系は、電子機器や産業機器、食品などの分野にも活用が広がった。
■18年の動向と25年予測
18年は、ばら積みピッキングや検査工程などロボット化が難しかった工程での自動化案件の増加により市場拡大となる見込み。
組立・搬送系は、労働力不足や人件費高騰などを受けて、自動化による人手作業の置き換えニーズとユーザーの裾野が拡大。特に小型ロボットを中心に旺盛な需要に期待。溶接・塗装系は自動車関連の設備投資が引き続き好調。
クリーン搬送系は、特需の反動でガラス基板搬送ロボットは鈍化するが、ウエハ搬送ロボットは半導体メーカーの設備投資の増加を受けて続伸する。アクチュエータ系は、中国を中心に電動スライダの需要が増加すると見ている。
25年の市場規模は、17年の3.1倍となる3兆3140億円まで増加と予測。自動化ニーズの高まり、協働ロボットの普及拡大、スマート工場などの柔軟な生産システムの実現で需要はますます増加の一途と見込む。組立や搬送、検査などの工程で導入が進み、組立・搬送系の需要が増加すると見られる。また、クリーン搬送は半導体需要の増加にともなって大手半導体メーカーの設備投資が続き、ウエハ搬送ロボットなどの伸びが期待されるとしている。
■協働ロボットと小型ロボットの市場動向
協働ロボットは、欧米を中心に、中国や韓国、台湾などのアジアでも導入が進む。特に中国では労働力不足や人件費高騰、多品種小量生産対応などの生産課題を解決する手段として、EMSや電機・電子関連で導入が増えた。メーカーと製品の増加によって市場は活性化し、18年も拡大基調。日本ではレンタルサービスも始まり、トライアルから販売につなげる動きも出ている。非製造業への拡大も期待され、25年には世界で5900億円の市場になると見込まれている。
組立・搬送系で販売の中心となっている小型垂直多関節ロボットは、自動車部品や、スマートフォンやテレビなど電子機器の生産ラインが中心だが、近年は食品・医薬品分野の梱包工程でのピック&プレース用途でも採用されている。
アジアを中心に導入が進み、17年は中国を中心に大きく拡大。特に可搬重量7キロクラスの需要が増え、18年以降も拡大の見込み。
日本や欧米など先進国では、単純作業から高度な熟練作業へのニーズが拡大している。日本は半導体や自動車関連、欧米では自動車関連、ライフサイエンス、食品関連の設備投資が好調であり、それに伴う需要が増加している。
■産業用ロボット IoT・AI関連サービス市場
産業用ロボットに関連したIoT・AIサービスは、25年には4110億円に達する見込み。ハードウエアとしてのIoT・AIコントローラはAIを組み込んだアプリケーションの広がりに応じて増加。協働ロボットレンタルサービスは、繁忙期の人手不足対策としての短期間レンタルや試験導入により需要が拡大。今後は幅広いユーザーへの展開が期待される。
予知保全システム・サービスは、保守・メンテナンス費用の低減ニーズの高まりを受けて、今後は伸びる見込み。アフターサービスも中・大型ロボットの定期メンテナンスや、ロボット搬入後の生産ライン立ち上げ、セットアップ、オーバーホールなどを中心に、今後さらに需要が増えるとみられる。