ローカル企業の育成がカギ握る
世界一のロボット市場の中国。自動化熱が高まるなか、製造現場への導入はもちろんのこと、新たなロボット技術の開発や市場開拓も進む。減速機はロボットの構成部品のなかでも特別重要なパーツと言われ、世界的にも日本企業が圧倒的なシェアを占める。そんな減速機のトップメーカーであるハーモニック・ドライブ・システムズの中国現地法人の哈黙納科(上海)商貿(HDCH)の幾田哲雄董事長兼総経理に「SIAF-SPS Industrial Fair Guangzhou(広州国際オートメーションテクノロジー専門見本市)」の会場で話を聞いた。
—— 中国の自動化に対する関心度はいかがですか?
この展示会には5年連続で出展して定点観測しているが、今年はローカル企業でもロボットにアプリケーションをつけた展示が多かった。昨年や一昨年には見られなかった光景で、ローカル企業にもお客が付き始めた、売込先が具体的になってきた証拠だろう。中国の自動化は上り坂だ。
CC-LinkやEtherCATといったネットワーク団体がブースを設けていたのも今年の特徴で、製造装置を入れることも大事だが、ネットワークでつないで自動化しようという意識も出てきている。
—— 中国のロボット市場が盛り上がっています。
中国は世界一のロボット市場で、1年で12万~13万台が売れ、25~27%の成長率で伸長している。
ロボット産業は政府方針「中国製造2025」の目玉の一つになっていて、国として中国ブランド製ロボットのシェアを20年に50%、25年には75%まで引き上げることを目標に掲げている。そのため各省や直轄市、各地方都市が、ロボットとその主要部品を開発する、製造する、システム化する、買って導入するといったロボットにまつわるビジネスに多くの補助金を出して優遇支援している。数年前にはロボット関連企業の数が400社を超えた時期もあった。いまは淘汰されて200社くらいに落ち着き、ロボットメーカーも20社くらいまで絞り込まれてきている。
いま中国国内のロボット販売台数の7割は日本を含めた海外企業が占めているが、中国のローカルメーカーも60~70%の勢いで伸びてきていて、シェア3割まで拡大している。大手メーカーはあまりローカル製品を使わないだろう。しかしティア1、ティア2のような下請け企業は、安く導入できるローカルメーカーのロボットを選ぶ可能性は十分にある。
—— 御社の中国事業はいかがですか?
当社の減速機は世界の主要ロボットメーカーの全てで使われており、非常に順調に推移している。しかし市場の急成長に対して供給が追いつかず、お客さまにはご迷惑をかけてしまっている。
6軸の多関節ロボット1台に対して減速機は6個必要とされ、市場の伸びに比例して必要数は倍々で増えていく。ロボットの軸数も増える傾向にあり、需給のバランスを取るのはとても難しい。
中国事業は順調だが、ローカルメーカーだけに限るとシェア50%までは取れていない。補助金に頼らず、技術も営業もしっかりして伸びそうなローカル企業が2、3社出てきている。そうしたメーカーを育て、伸ばしていきたい。
—— 今回のブースの見どころについて。
ブースでは、製品を陳列してPRすることはもちろんだが、デモでアプリケーションを明確にし、こういう用途であれば当社の製品が適しているということを訴えた。
自動化向けには、半導体ウェハー搬送装置を模し、当社製各種アクチュエータが三菱電機のACサーボシステム「MELSERVO」につながることを紹介するデモと、当社製高精度遊星ギアによるパラレルリンクロボットの実演を行った。
次の需要を見込んだデモとして、当社製波動ギアや遊星ギアを組み込んだアシストスーツや世界最小波動ギアを組み込んだフィンガーハンドモジュールにビジュンセンサーを組み合わせた「じゃんけんロボット」を出品した。サービスロボットや介護用ロボットの市場拡大に期待している。
いま世界的には産業用ロボットが主流だが、今後はサービスロボットが急速に拡大していくだろう。産業用ロボットでは、中国は先行している日本とヨーロッパを追いかける立場だったが、サービスロボットは世界各国が同じスタート地点からのヨーイドン。大学や開発者の数、設備や資金などインフラは中国の方が整っており、早く立ち上がっていくだろう。当社にもすでに多くの引き合いが来ている。