景気の拡大基調が続く中、FA・制御機器を中心に価格見直しを行うメーカーが増えている。原材料価格の上昇に加え、物流費や人件費の増加、さらには需要減少によるコストアップや需要急増による調達難など、理由はさまざまだ。2008年のリーマンショック以降約10年ぶりの目立った動きであるが、ユーザーの受け止め方は景気が好調であることもあり比較的冷静で、スムーズに浸透しているところが多い。
新年度を迎えた4月前後をめどに、製品価格の見直しを行うFA・制御機器関連メーカーが例年になく多い。
IDECは、4月から操作用スイッチをはじめ、防爆機器、安全機器、盤用機器などを中心に10~20%価格を値上げした。
また、パトライトも3月29日から各種積層回転灯中心に30%前後値上げしているほか、サンケン電気は5月1日からUPS(無停電電源装置)の一部機種を4~14%値上げする。
さらに4月から、サンミューロンはマイクロスイッチや押しボタンスイッチなどを、タイコエレクトロニクスジャパンはダイナミックコネクタなどを、篠原電機は3月から盤用機器や配線資機材などを、ニチフも2月から配線接続機器の価格を改定し、値上げを発表している。
市場を取り巻く環境は、為替は比較的安定しているものの、原油や銅材などの原材料の価格がじりじりと上昇している。また、働き方改革や景気の拡大に伴い人手不足も顕著で人件費が上がってきているほか、運送価格の見直しや値上げで配送コストの上昇も徐々に進んでいる。
さらには、旺盛な需要増から素材や部品の調達難に伴うコストアップや、逆に需要減少によって量産効果が発揮できないことを値上げの理由にする製品もある。
こうした一方で、自動化投資で人件費の上昇を抑えたり、生産方法の工夫で使用材料のムダを抑えたりする取り組みで、値上げを見送るメーカーも目立つが、基本的には着実にインフレ傾向が強まっている。
購買するユーザー側も、現在は納期通りに納品してもらうことで、生産を計画的に進めることが優先課題となっていることから、こうした動きにも比較的冷静に受け止めている。
リーマンショック後の縮みきっていた日本経済であったが、ここ1、2年でリーマン前の状態に戻りつつある。コストダウン優先で海外への生産シフトを強めてきた日本の製造業も、少しずつ正常な形でのサイクルに戻りつつあると言えそうだ。