5600社出展、21万人来場
4月23日から27日の5日間、ドイツ北部のハノーバーで世界最大級の国際産業見本市ハノーバーメッセが行われた。その様子をレポートする。
■ハノーバーメッセとは?
ハノーバーメッセは、毎年4月下旬にドイツ・ハノーバーで行われる世界最大級の国際産業見本市。1947年にドイツの戦後復興事業としてスタートし、昨年70周年を迎えた。
産業見本市の名の通り、出展対象は産業全域に広がる。FAやPA、モーションなどオートメーション技術、デジタルファクトリー、電力・エネルギー、産業用部品、産業向けサービスなど。同時開催でロジスティクス関連のCeMATも行われている。
会場となるハノーバー国際見本市会場は、総面積100万平方メートルの超巨大な敷地に27の展示ホールが点在し、展示面積としては49万8000平方メートル。東京ビッグサイト(総面積16万平方メートル、展示面積10万平方メートル)の約5倍の大きさを誇る。毎年、5000社強がブースを構え、それを目当てに世界中から20万人以上が訪れる。今年は5600社が出展し、21万人が会場を訪れた。
■制御機器各社 新製品をPR
今回見学したなかで最も巨大なブースを設けていたのがシーメンス。スマートファクトリー、インフラなど、あらゆる産業のオープンなIoTプラットフォームとして利用でき、OS的な位置づけを狙うMindSphereを中心に訴求した。
ベッコフオートメーションは、モーションコントロールのTwinCATに、画像処理機能を組み込んだTwinCAT Vision、超小型の産業用PC「C6030」、ファーウェイ(Huawei)と協力した5G対応などを展示した。
フエニックス・コンタクトの目玉は、PLC言語と汎用プログラミング言語の両方でプログラムが組めるPLCプラットフォーム「PLCnext」の紹介。特別コーナーを設け、技術プレゼンテーションのほか、ワークショップも実施。このほか超薄型サーキットブレーカーやレバーを下げるだけで結線できるプリント基板用コネクタなど新製品を発表した。
ピーアンドエフは、SIL3とPLeに準拠したAGVの安全システムをデモ。位置情報を書き込んだカラー3次元コードをガイドとして使い、それをセンサで読み取ることで位置認識と衝突安全性を実現。通常は磁気テープと読取機で航路を認識し、近接センサや接触センサで安全性を確保するのに対し、1台のセンサで2役をまかなっている。またIO-Link対応RFIDリーダ・ライターも出品していた。
シュナイダーエレクトリックは、機械メーカー向けのプラットフォームであるEcoStruxure MachineAdvisorを提案。機械メーカーが販売後も客先の機械の状態を監視できる仕組みで、サービスやメンテナンスの効率化に役立てられるものとして力を入れている。
日本企業では、制御機器が集まる9号館にオムロンが出展。マスカスタマイズを想定した装置デモのほか、IO-Linkの活用など、得意とする“地上10m”の領域での技術をアピールした。
■協働ロボット 小型が主流に
人と並んで作業できる協働ロボットは、ロボット大手各社から出そろい、今回は具体的なアプリケーションや実際に手に触れて体験できるものとして前回以上にその姿が目立った。
安川電機では、側面と奥の3方を囲い、正面だけが開いたデモブースにMOTOMAN-HC10DTを2台設置し、それらを連携させた組み立てデモを実施。通常は高速で作業をしながら、人がブース正面の特定エリアに入ると安全モードに切り替わり、ロボットのスピードが落ちるというもの。協働ロボットの作業性と安全性をアピールした。
KUKAはLBRシリーズの新モデルLBR-iisyを展示。可搬重量3キロ、可動範囲600ミリと、従来のLBR-iiwaよりもワンサイズ小ぶり。より人の身近にいて作業を手伝う「cobot」としての機能を高めている。袋状のワークや携帯電話のバッテリーのようなワークのピッキング、ティーチングのデモなどを行った。
ユニバーサルロボットは最も小型の3キロ可搬のUR3を中心とした展示。デモとして3台の協調作業を行ったほか、卓上に置いて小さなスペースでも使えることをアピールしていた。
このほか新興メーカーとして、FRANKA-EMIKAはボードPCの測定デモを実施。前回のロボット単体の出品から進化した姿を見せた。台湾のTEKMANもピッキングのデモなどを行っていた。
■目を引いたAR活用デモ
ARやVR、MRのソリューションが目立っていたのも今回の特徴。これまでは、これらの技術が製造現場でどれだけ使えるか、その活用法が手探り状態だったのに対し、今回は具体的に何ができるか、どこでどう使うかという実践的なデモが散見した。
■中国が1000社超 巨大ブースも
ハノーバーメッセに出展した企業のうち、6割がドイツ国外から。ドイツを除いて最も多かったのが中国で1000社を超える企業が出展した。
通信機器大手のファーウェイがデジタルファクトリーのエリアで巨大なブースを設けたほか、中国のラインビルダーによる独自出展なども見られた。また中国企業が集まった中国パビリオン、中国南部の都市で製造業が盛んな深パビリオンなど、国や自治体を挙げた取り組みも。また、ドイツの販売代理店が中国のロボットや産業機器を紹介するケースも多く見られた。
■日本企業の存在感は?
日本企業の出展社数は81社と決して多くなく、ブースも比較的小ぶり。日本国内の展示会に比べてアピール力に乏しかった感は否めないが、それでも多くの人を集めていた。
また、今回初めて出展して市場開拓にチャレンジした企業も。
ロボット向けソフトウエア開発のリンクウィズは、検査ブースも含めたオールインワンパッケージとなったロボットによる自動検査システム「L-Qualify」を日本から持ち込んで紹介。すでにいくつかのロボットメーカーとも話が進んでいるという。
駿河精機も今回が初出展。CEマークを取得したヨーロッパ向けのステージを展示した。
意外だったのがヤマハ発動機。ハノーバーメッセには今回が初出展で、搬送ロボットからスカラロボット、多関節ロボットまで、すべてを統合制御したロボットシステムを展示し、多くの人を集めていた。
エッジクロスコンソーシアムも初出展し、エッジ領域のオープンプラットフォームを訴求した。
またロボット革命イニシアティブ協議会と日本能率協会が共同設置した日本パビリオンにも6社が合同で出展した。