UL Japan 制御盤に関する米国の規格規制および各国における状況 (1)

第1回 米国における産業機器、産業機械に対する規制の概要
〜米国電気工事規定への適合必要〜

 

■適用される法律

州や地域からなる連邦国家として統治されている米国には、職場の安全衛生を規定する法律として連邦職業安全衛生法が存在します。この法律に基づき、米国労働省(United States Department of Labor)管轄下の労働安全衛生局(Occupational Safety&Health Administration, OSHA)が、労働安全衛生規則 29 CFR part 1910を制定しています。米国における産業機器、産業機械に適用される法律としては、まず大きくこの二つの法律が挙げられます。

労働安全衛生規則 29 CFR part 1910は、各州、地域が独自に労働安全衛生計画を策定、運用することを奨励しており、策定される計画は、労働安全衛生規則 29 CFR part 1910と同等、もしくはそれより厳しくなければならないと定めています。独自の労働安全衛生計画を持たない州、あるいはOSHAによって認可されていない州、地域においては、労働安全衛生規則 29 CFR part 1910が適用されます。また、米国へ産業機器、産業機械を出荷する際にはまず、出荷先の州または地域が独自に制定した法律があるかを確認する必要があります。

 

■労働安全衛生規則 29 CFR part 1910

【対象】
労働安全衛生規則 29 CFR part 1910の対象は、米国全土の事業者です。ただし、公務員、自営業者、家族経営の農場、炭鉱労働者、原子エネルギー労働者等は対象から除かれます。

【施行状況の監督】
各州、各都市の監査官(AHJ※)が規制の施行状況を監督します。OSHAは設置される電気設備および特定の機械群に対し、米国国家認証試験機関、National Recognized Testing Laboratories(NRTL)による認証(リスティング認証、ラベリング認証など)を取得すること求めており、AHJはこれを確認します。

※AHJ(Authority Having Jurisdiction):OSHAの規則を基に、事業運営の状況を監督する機関、またそこから派遣された監査官。電気的分野に限らず、労働安全に関係するあらゆる項目についての監督を行う。

【構成】
労働安全衛生規則 29 CFR part 1910は、20のサブパート(Subpart)から構成されます。ここではSubpart S、「電気」の要求事項について説明します。

Subpart S、303項は、事業所で使用される全ての電気製品、電線が“Acceptable”であることを要求しています。“Acceptable”の意味は399項で次のように定義されています。

1.NRTLにより安全であることが認められていること(NRTL認証品)

2.設置方法や機器がNRTLにより認められていない(認証品ではない)場合、連邦政府機関や地方自治体の機関(例:AHJ)などによって試験され、米国電気工事規定(National Electrical Code、NEC)に適合していることが確認されていること

3.カスタムメイド(特定の顧客向けの特注品など)の場合、メーカー独自の試験データに基づき、連邦政府機関や地方自治体の機関(例:AHJ)などにより、適合が確認されていること

 

■まとめ

労働安全衛生規則 29 CFR part 1910は、安全に関する要求事項への適合を確認する具体的な手法を明記しておらず、認証機関による認証、NECへの適合、もしくは、カスタムメイドの場合の個別対応を要求しているのみです。前記②で言及しているNECは実質的には規制という位置づけですが、ここにも具体的な内容は記載されておらず、安全規格の要求事項を用いて規制に適合させるという手法がとられています。産業機器、産業機械を法律に適合させるには、安全規格を用いて、NECへ適合させることが必要と言えます。

次回は、産業機器が多く搭載されている産業用制御盤を例に、規制への適合方法について解説します。

 

株式会社UL Japanコマーシャル&インダストリアル事業部
今村 康敬/雄谷 隆一

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