日本電機工業会(JEMA)は5月16日、IoTによる製造業の変革に関して、製造業の将来像を示した「2017年度版 製造業2030」を公表した。2030年の製造業で実現されるであろうビジネスシナリオを考察し、これまで提唱してきたFBM(フレキシブル・ビジネス・アンド・マニュファクチャリング)を実現するための課題とロードマップをまとめた。
製造業2030、FBMとは?
「製造業2030」は、同会スマートマニュファクチャリング特別委員会が2030年の製造業の姿を予測し、まとめたもの。15年度に活動をスタートし、提言書という形で15年度版、16年度版を発行。このほど17年度版が公表された。
製造業2030のベースとして、2030年の製造業の形を示した「FBM」が15年度版で提唱された。2030年には、市場環境に合わせて製造プロセスを組み替え、フレキシブルにビジネス環境を構築していくようになるという考え方だ。
具体的には、2030年には商品企画開発・設計生産保守といったプロダクトライフサイクルの一連の流れとそれを構成する各機能や、調達製造物流販売サービスのサプライチェーンの一連の流れと各機能など、製品やソリューションを提供するための各機能が飛躍的に向上した時代が到来する。
その時にはそれぞれの機能が、生み出すべきソリューションは何か(ユーザーへの価値)、何を改善したものか(設計による価値)、どのようにそれを実現するか(生産技術による価値)、納入後のサポートはどうするか(運用・保守面での価値)をリアルタイムに検証、判断し、フレキシブルに実行して社会を支えるだろうとし、それを「FBM」としている。
FBMの基盤は、IoTや分散制御技術、ネットワーク技術、辞書・翻訳技術など「つなげる技術」で構築され、バリューチェーン各機能間の連携が最適なタイミングでとれる構造となっていて、組織や企業を超えた連携や、設備間、人と設備とシステム間が情報を伝達できるという。
16年度にはFBMの構造(アーキテクチャ)を検討し、ビジネスを取り込んだFBMモデルを提示。FBMは差別化のためのサービス要素、市場、運用プロセス、FBM基盤で構成され、ビジネスを作るには収益性とコスト競争力、変化への対応力、戦略性、コアコンピテンシの要件を満たすことが不可欠であるとした。また個別設計、すり合わせからアーキテクチャ設計への移行も提言された。
17年度版で示されたもの
17年度版では、18年現在から2030年の姿を想像し、製造業がどのように進化し、フレキシブルになって付加価値を生むようになるのかを、具体的なビジネスシナリオで検討。マスカスタマイゼーションや製造業のサービス化、物流改革、企業間連携などを題材として考察。その結果、FBMに必要な要件20項目が洗い出された。
FBM実現までの流れ、要素、登場人物など基礎となるものを検討。登場人物として、ビジネスをスタートさせる事業主と、ニーズの変化に対応して最適なバリューチェーンを迅速に構築する役割を持つFBMコーディネータがいる。事業主がFBMコーディネータにシステム構築を依頼し、FBMコーディネータは各社が登録したデータが詰まったFBM要素DB(データベース)からシステムを作り、FBMツール(ソフトウエア)で効率を計算して評価しながら複数のシステム候補の中から効率の良いシステムを選んで構築する流れが示された。FBM実現に向けてFBM要素DBと、システム全体効率の良否を評価するFBMツールが必要であり、合わせてFBMコーディネータがFBMモデルを使って活躍できる環境構築が必要とされた。
また今後進める中長期計画について、6つの施策を挙げている。1つはFBMモデルの検討を継続。18年度はFBMの評価手法等の開発を含む検証、19年度は展開、20年度以降は普及を進める。2つ目はFBMコーディネータの環境整備。18年度はその役割を明確にする。3つ目は制御盤2030の継続発展。4つ目がJEMAデバイスプロファイル技術専門委員会が進めている電動機のIoTのプロファイル標準化への協力。5つ目がロボット革命イニシアティブ協議会やIVIなど国内工業会・団体との連携。6つ目が海外工業会との情報交換としている。