自分を売って攻めの営業 日々の研鑽が最も重要
かつて営業では上司から営業の心得を訓示されていた。その中に「営業たる者は営業をする際にまず自分を売って、次に会社を売って、最後に商品を売るんだ」というのがあった。時代が違う、そんな悠長な時代じゃない、と言うかもしれないが、これは営業の本質を突いている。
営業は押し売りと思われていた時代に、営業マンを避けようとする意識が一般の人にあった。そんな背景があって、業務産業向けの営業でも前述のような訓示がなされたのだと思う。
現代でも通りにいるキャッチセールスは誰でも避けようとする。欲しくない物だからという理由が多いと思うが、仮に興味を少し感じるものであっても、セールスしている相手は何者なのか、良い物なのか、しつこくはないかなどを疑う意識が常に先立つためである。
人は信用している人から買いたいし、信用ある会社でつくっている物を買いたいのが常である。電気部品や機器商品に関して言えば、現状では見込み客が商品を買う場合、信用ある営業マンから買うというよりは信用ある会社から買うというのが通り相場である。
つまり営業マンは会社や商品の背後にいて会社の実力と商品力に応じて買ってもらっているために、会社の実力以上の力を発揮する場面は極めて少ない。部品や機器商品業界では、営業マンが確保する売り上げは会社が過去からつくり上げてきた実力の域から出ないということである。
昨今ではこの業界でも通販会社が大きな位置を占めるようになった。情報通信の発達と物流の発展に負うところが大きいと思うが、しかしそれだけではない。見込み客にとって、会社の内容がわかりやすいことと、しつこい営業マンがいないから誰にも邪魔されず買いやすいという思いがあるのだ。
コンビニが発展した背景の一つにも同じ理由がある。専門店やデパートでは買いたいそぶりを見せずに見ているだけでも売り子が近くに寄ってきてあれこれ言い、何か買わなければならない雰囲気になるため、気の弱い見込み客はその場から去る。ところがコンビニは見るも買うも心置きなく振る舞える。そこが良いのだ。
情報時代に育ってきた人は、他人に聞いたり他人と関わり合ったりすることなしにやってきた人だ。そんな人は皆、他人との関わり合いに弱いのである。この業界の見込み客となる技術者は特に他人との関わり合いに弱い。だから見知らぬ営業マンには一定のガードを固める。あれこれ言わない通販会社がいいと言う技術者が増えるはずである。
それなら、「人は信用している人から買いたい」という教えの項目はなくなってしまい、かつて教えていた「まず自分を売ってから」というフレーズは現代では不要になってしまうのであろうか。いや、そうはならない。
営業には攻めの営業と守りの営業がある。会社の実力や商品の力に応じて奮闘するのは守りの営業が主体である。顧客を訪問し、新商品を紹介し、売り込んだとしても、現在では守りの営業にすぎない。
攻めの営業とは戦(いくさ)と同じで陣地を取ることである。現在の営業戦線でも同じことで、従来の顧客の無理難題を解決し、売り上げを確保しているのは守りの営業である。攻めの営業はいかにして新たな選定者を見つけ、その心を捉えるかである。
存在感を増している通販会社や業界大手の販売会社では、営業は守りに徹してもいい。攻めの営業を人に代わって潤沢な資本力がやってくれる。各種の機関を使って販促をし、豊富な在庫を持って出てくる案件を待てばいいのだ。
余裕のない販売店は攻めの営業を人がやらねばならない。それにはやはり「自分を売って」という教えをかみしめ直さねばならない。自分をどう売るかの研鑽は現場に最も近いディーラーヘルプチームの重要項目なのだ。