レイアウト設計業務を約50%効率化し、ニーズや運用に合ったレイアウトを定量的かつ短期間で提案
日立プラントサービス(東京都豊島区)は、このたび、AI技術を活用し、食品工場内のレイアウトを自動で作製するエンジニアリングツールを開発し、実案件への適用を開始しました。
本ツールを活用することにより、工場建設の計画段階で、ニーズや運用に合った複数のレイアウトを定量的かつ短期間で提案できることから、食品メーカーはレイアウトの評価・選定のスピードアップを図ることができます。
日立プラントサービスでは、本ツールを、市場拡大が続いている惣菜・弁当などの中食をはじめとした食品工場向けプラントエンジニアリングに導入することにより、従来に比べて工場レイアウト設計業務を約50%効率化し、工場建設の上流コンサルティングを強化します。
近年、食の安心・安全を求める消費者ニーズの高まりを受けて、食品工場においては、原料入荷から加工、包装、保管、製品出荷に至る全てのプロセスにおいて、人の入退出やモノの流れも含めて一貫した衛生・品質管理の強化が求められています。また同時に、生産性の向上や働きやすい工場であることもますます重要となっています。
食品工場のレイアウト計画は、工場建設の初期段階において、こうした複数の要素を考慮しながら、敷地に合わせた建屋形状や階数の決定、盛付け・包装室では高い清浄度を確保するといったHACCPの考え方に基づく工程ごとの部屋の区画などを踏まえて、部屋の配置や組み合わせを決定します。同時に、作業動線や移送距離が伸びることによる生産性の低下や、動線が交差することによる品質管理上のリスクなど、さまざまな条件に対する配慮も必要です。
このため、従来はレイアウトの策定に多大な時間がかかり、計画したレイアウトが最適かどうかの定量的な評価も難しく、また、計画には熟練した設計者の経験・ノウハウが必要であり、熟練技術者の不足なども課題となっていました。
そこで日立プラントサービスでは、AI技術を用いレイアウトを自動で作製するエンジニアリングツールを開発しました。開発においては、熟練技術者の設計ノウハウをレイアウトの要素ごとに項目を分けて標準化し、評価点として数値化するとともに、ツールの核となる部屋の組み合わせを最適化するアルゴリズムには、AIの一つとされる遺伝的アルゴリズムを改良して利用しました。
本ツールを適用することにより、「原料・製品動線」「適切な衛生区画」「作業員動線」「副資材、廃棄物の動線」など複数の条件を最適化する組み合わせを高速でパターン解析することができます。さらに、各条件の優先順位を考慮したレイアウトを複数作製し、それぞれの評価点を表示できることから、定量的な評価・選定を可能としました。
条件さえ入力すれば、レイアウトの検討は自動で行うため、日立プラントサービスにおいては、複数のレイアウト案を並行して検討する場合、工場レイアウト設計業務を約50%効率化できると想定しています。
また、食品メーカーは、工場建設の計画段階で、ニーズや運用に合った複数のレイアウトを定量的かつスピーディーに評価・選定できます。玄関や階段の位置など周辺施設や既存設備も含めて適用できることから、来客動線などのこだわりや従業員の入退出管理なども考慮できるとともに、既設工場の改修にも適用が可能です。さらに敷地の形状ごとにレイアウトを作製することが容易なため、土地の選定にも活用できます。
日立プラントサービスは、今回開発した工場レイアウト自動作製エンジニアリングツールを年間10件以上の食品工場のエンジニアリング案件に適用予定であり、上流コンサルティングのさらなる強化を図ります。これにより、食品をはじめとする工場の上流コンサルティングから、設計、建設、運用・保守サービスまで一貫して提供するトータルエンジニアリング事業の拡大をめざします。
設計者作製レイアウトとの比較評価結果(惣菜工場の例)
設計者が作製したレイアウトと本ツールを適用し作製されたものを比較した結果、動線の交差など重要な要素については設計者と同程度まで考慮されたレイアウトが出力され、細部に若干の修正を加えることで設計者が作製するものと同等のレイアウトができることを確認しました。
▲設計者作製のものと「仕分け室」の位置が異なるが、必要な「加工室①~④」の面積を確保しながら「原料・製品動線」がほぼ同等に整流化されている
FOOMA JAPAN 2018国際食品工業展での展示について
食品工場レイアウト自動作製エンジニアリングツールは、2018年6月12日(火)~15日(金)に、東京ビッグサイトで開催される「FOOMA JAPAN 2018国際食品工業展」の日立グループブースにおいて展示予定です。