検査や監視用として生産ラインで多く使われている産業用カメラ(マシンビジョン)。IoTの進化にともない、画像データの活用ニーズが高まり、再び需要が盛り上がっている。ドイツ・Baumer Optronic GmbH(バウマー)の産業用カメラは、基本となるイメージング技術はもちろん、制限が多く、厳しい環境下での長期運用という産業アプリケーションに適した製品として定評がある。日本で同社製品を取り扱うキヤノンITソリューションズで話を聞いた。
バウマーグループは、1952年創業のスイスの産業機器メーカー。モーション機器やセンサー、計測器などを製造・販売し、バウマーグループとしてグローバルで年間約500億円の売上高がある中堅メーカーだ。
画像事業は、1997年にBaumer Optronicとしてドイツでスタートし、昨年20周年を迎えた。はじめは大手企業のOEMを引き受けていたが、10年前から自社ブランドで展開をはじめ、事業を拡大。すでに世界トップ10に食い込むほどの急成長を遂げている。
同社が多くのユーザーを獲得してきた理由が、高解像度や高速対応といった業界最高水準の画像技術と、精度の高いハードウエアの両立。特に後者は、ドイツ企業らしい高い設計・製造技術のこだわりによって製品の基本性能と利便性を高め、他者との差別化要因となっているという。「産業用カメラもデジタル化で製品に明確な差が出にくくなるなか、バウマーは筐体や部品の設計と製造による作り込みで付加価値を上げ、そこがユーザーに評価されている」(キヤノンITソリューションズ プロダクトソリューション事業部東日本営業本部企画部企画課福西秀次担当課長)。
例えば新製品のCMOSカメラセンサー「CXシリーズ」は、Sony製「Pregius」、オンセミコンダクター製「PYTHON」のセンサー搭載に加え、ハードウェア設計の工夫で基本性能を向上。筐体は左右上下4方向すべてに固定できる特別設計で、取り付けの柔軟性を確保。内部にはセンサー保護のための密閉構造を設けて粉塵の汚れを防ぎ、検査精度の低下やクリーニングによるダウンタイムを大きく減少。また熱設計で放熱効率を上げ、プラス65℃の高温環境下でも高い検査精度を実現している。
より耐環境性を高めた「CX IPシリーズ」は、マイナス40℃からプラス70℃まで温度範囲を拡張し、IP67防水防塵性にも準拠。軽量・堅牢な筐体設計で振動や衝撃にも強く、自動車やロボット、鉄道、社会インフラのほか、食品飲料向けのアプリケーションに適している。
同社は、VGAから48メガピクセルまでの幅広いラインアップに加え、スマートビジョンも展開。用途に合わせたあらゆる産業用カメラを取りそろえている。今後について福西担当課長は「バウマーの製品は個体差が少なく、導入や交換の際に設定や調整の手間が少ないと高評価をいただいている。こうした高品質と高信頼性、耐環境性能の高さというバウマーらしい強みを紹介し、日本でも広めていきたい」と話している。