第3回 産業用制御盤の短絡電流定格
〜特性、回路構成で決定〜
■短絡電流定格(SCCR)とは
短絡電流定格は、英語名称のShort Circuit Current Ratingを略して通称SCCRと呼ばれます。SCCRとは、短絡が起きたときに回路にある機器が発火や地絡をせず、他の機器へも危害を及ぼさない限界の短絡電流値のことです。
■短絡電流:定格の目的
短絡が起きると、ヒューズやブレーカーなどの過電流保護機器が動作して遮断します。このとき非常に短い時間ですが遮断されるまでの間に大きな電流が流れます。この電流の大きさは制御盤へ供給する電源の容量によって変わります。
短絡が起きたとき回路が安全に遮断されるか、あるいは正常に遮断されなかったり、遮断されても回路上で発火や地絡事故が起こったりする可能性もあります。これらを防ぐために制御盤は電源からの短絡電流以上のSCCRを有していることが求められ、これを銘板に表示する必要があります。設置する際には、制御盤に表示されているSCCRを超える電源に制御盤を接続することはできません。
■短絡電流:定格の決め方
制御盤は、ブレーカー、モーター・コントローラー、リレーなどのような産業機器部品が、工場で組み立てられ配線されたものです。個々の部品にはSCCRが表示されているものも表示がないものもあり、それらのSCCRはそれぞれ異なります。制御盤としてのSCCRをどのように決めれば良いでしょうか。
NEC(ANSI/NFPA 70)には以前から制御盤のSCCRの表示要求がありましたが、過電流保護機器のSCCRを制御盤のSCCRとして表示しているケースが多くみられたことから、NECの2005年版から「承認された方法を使用して確定した短絡電流定格」が要求されるようになり、制御盤のSCCRを決める方法としてUL 508AのSupplement SB項が参照されています。この決定方法は短絡試験を実施して確認するのではなく、構成部品のSCCRと特性、回路構成を元にして制御盤のSCCRを決定するというものです。
国際規格IECにも、短絡電流定格の決定に用いられる規格(例:IEC61439-1、IEC60909-0など)がありますが、UL 508Aの手法はIEC規格よりもより実用的であることから、米国だけでなく、多くの地域、国で受け入れられています。
■まとめ
短絡電流定格の意味と、その必要性について説明しました。エンドユーザーは設置場所で接続される電源の推定短絡電流を提示して、制御盤を調達する必要があります。また制御盤メーカーは、この情報を元に設計・製造し、表示することが求められます。
株式会社UL Japanコマーシャル&インダストリアル事業部
今村 康敬/雄谷 隆一