「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり」。戦に勝つためには家臣や領民を含めた周りの人を大切にし、信頼関係を構築することが大事と説いた武田信玄の言葉だ。彼は領民を守るため、攻め込むことで防御とし、国内では戦をしなかったと言われる。また、居城は大きな城ではなく、躑躅ヶ崎館という館だった。家臣も館の周りに住んでいて、近い距離感で人心を大切にしたことがうかがわれる。
▼最近はブラック企業、パワハラ等が世間を騒がせ、人を大事にする、人に感謝をすることがないがしろにされている状況が次々と明らかになっている。穏やかで優しい人が多く、国としても平和で治安も良い日本というイメージからは程遠い出来事が多いのは残念なことだ。しかしSNSの普及により、そうした社会の暗部、歓迎できない出来事が「見える化」しているのは悪いことではない。次はそこから出た改善点を直していけばいいだけの話だ。
▼製造業は昔から多くの人が集まり、老若男女それぞれの考えや知見を出し合うことで発展してきた。自動化やロボット化が進んでいるとは言え、どこまで行っても本質は変わらない。製造業は「人」で成り立っている。魅力あるところに人は集まり、経済が発展する。人が離れていくところは言わずもがな、衰退しかない。製造業を発展させようと思ったら、まずはどんな人でも製造業で働くことが楽しい、快適だと思える環境を整え、活躍できる場を作ることが最重要だ。スキルを磨いて鋭い武器となれる人材も大切だが、石垣として何十年も支えてくれる人も重要な戦力である。やはり「人は城。製造業も人」である。