第4回 産業用制御盤のエンクロージャー
〜「認証品」の使用に留意〜
■エンクロージャー
「エンクロージャー」とは何を表すでしょうか。日本語では「筐体(箱形のケース)」と表現されることが多いようです。
電気機器は、基盤ユニットのようにむき出しのものもありますが、通常はケースに入っています。
一般的にこのケースをエンクロージャーと呼ぶ場合もありますが、ここでは、電気機器設置後の保護のために、最終的に入れる容器としてのエンクロージャーについて取り扱います。
エンクロージャーの主な目的は以下の3点です。
1.エンクロージャー内の危険部からの人体の保護
2.固形物の侵入に対する内部の電気機器の保護
3.水や油の侵入に対する内部の電気機器の保護
■エンクロージャータイプ定格
日本や欧州では、電気機器のエンクロージャーの防塵・防水性能をIPコードで表すのが一般的です。IPコードとは、International Protection code(国際保護等級)の略で、エンクロージャーの構造を各等級に分類したものです。
一方、北米では保護等級にIPコードではなく、エンクロージャータイプ定格を使用します。米国電気工事規定(National Electrical Code,NEC)には、(防爆などではない)一般的な場所での利用において、Type 1から Type13まで16種類のエンクロージャータイプが規定されています。タイプごとに保護対象が異なるため、設置される環境に合わせたエンクロージャータイプを選定します。エンクロージャータイプの数字は性能を表すものではありません。(数字が大きければ性能が良いというわけではありません)
a) 屋内用エンクロージャー:Type 1、2、5、12、12K、13
b) 屋内または屋外用エンクロージャー:Type 3、3X、3R、3RX、3S、3SX、4、4X、6、6P
これらのタイプは、NEC(ANSI/NFPA 70)、UL 50E(Enclosures for Electrical Equipment, Environmental Considerations)や、NEMA 250(Enclosures for Electrical Equipment(1 000 V Maximum))に記載されています。
また、NEMA 250にはIPコードとの変換表が掲載されています。ただし、保護対象や試験条件が異なるため、NEMAやNECにも注記があるように、エンクロージャータイプとIPコードの比較の目安としては参照可能ですが、実際には表のとおりに変換して使用することはできません。そのほかにも、エンクロージャータイプは性能試験だけではなく、材質や寸法など構造にも要求事項があるという点で、IPコードと大きく異なります。
■産業用制御盤のエンクロージャー
制御盤をエンクロージャーで保護する場合(エンクローズドタイプの制御盤)、Type 1の“金属製”のエンクロージャーであれば、UL 508Aの要求に従ってType 1の”金属製”エンクロージャーを設計・製作し、自社の制御盤に使用することができます。それ以外のType 1~13のエンクロージャーが求められる場合は、認証されたエンクロージャーを使用する必要があります。「Type X“相当”」、「Type X“準拠”」、「NEMA Type X」という説明だけでは、認証品とは認められませんので、注意が必要です。
■まとめ
制御盤は、最終的に設置される環境に適したエンクロージャータイプ定格を有したエンクロージャーに入れられて設置される必要があります。エンクロージャータイプはIPコードでは代替できないこと、また、Type 1の金属製エンクロージャー以外は、認証品を使用しなければならないことに留意する必要があります。
株式会社UL Japanコマーシャル&インダストリアル事業部
今村 康敬/雄谷 隆一