働き方改革、生産性向上と日本の製造業が揺れているが、他の国ではどうなのか? 特に現場で働く人はどう考えているのか? 製造業の現場をテーマとした見ル野栄司氏のマンガ「シブすぎ技術に男泣き!」と、フエニックス・コンタクトがコラボした「シブすぎ技術に男泣き!ハノーバーメッセ編」で、ドイツと日本の働き方について興味深い話が出てきたので紹介する。
▼ブラックなメーカーでエンジニアとして働いていた見ル野氏と、1日10時間以上働いてはいけないという法律のなか、第2次世界大戦後の労働力不足を自動化技術の内製化で乗り越え、それを競争力の源泉まで引き上げた同社エンジニアのハッセ氏。根っこは同じ技術者ながら正反対の環境を過ごしたエンジニアの働き方に関して意見を交換した。完璧に動く見事な製造ラインを見た見ル野氏が「ここまでやるには、残業してでも仕事したい時があったでしょ?」とさらに突っ込んだ質問をぶつけると、ハッセ氏は「労働時間を超えてまで作らなければならないなら、徹底的に問題を探し出して時間内でもっといいものを作って解決するという信念を持つのです!!」と一刀両断。さらに「日本の技術者は、労働者としてでなく、人間として生きてほしい」と決定的な一言。見ル野氏はこれを「働くことがすべてじゃない… だってあなたの人生でしょ」と解釈し、日独のエンジニアの働き方の違いに衝撃を受けた様子。最後は「両方のいいところを取っていくのが大事だよ」と話す日本法人の青木社長と肩を並べ、男泣きをするというストーリー。
▼多少の違いはあるにせよ、ドイツは昔から一貫してワークライフバランスを重視して自動化に取り組み、ベテランも若手も同じような価値観で時を重ねてきた。一方、日本は仕事中心でバリバリ働くモーレツ社員からワークライフバランスへと大きくかじを切ろうとしている。ベテランと若手の価値観は180度異なり、たとえ時流に合わせて制度を整えたとしても、働く人の心、感覚が従来のままであったら意味がない。「仏作って魂入れず」になりかねない。ベテランの勤勉さ、献身性と若手の発想力とバランス感覚。これをうまく融合させることが今の日本の製造業に求められている。