中国工場の良し悪しはトップの方針・考え方で決まる 前編(全3回)
中国の工場運営において、そのトップの方針や考え方は非常に重要です。日本の中小企業を見てみると、社長の方針や考え方がそのまま会社の方針や考え方となっています。実は中国の工場というのは、日本の中小企業の形態と類似している点が非常に多く、工場の規模に関わらず中小企業そのものと言っても過言ではありません。中国工場におけるトップの影響力について全3回でご紹介します。
中国工場の方針や考え方は、トップのそれと一致するのです。中国工場でトップというのは、総経理や工場長と言われる人たちが相当します。中国工場の総経理が品質重視、品質第一の姿勢を打ち出せば、従業員もそれに沿った行動をするようになってきますが、別の方針、例えば、利益を重視したとすれば、従業員もそれに沿った行動をするでしょう。
特にどちらかと言えばボトムアップになじんでいる日本人とは違って、中国人はトップダウンになじんでいますからトップの言うことは、そのまま受け入れることになります。
どこの会社や工場にも、その会社や工場が持っている文化とか風習、雰囲気というものが存在しています。実は、中国工場運営においては、その工場の持っている文化や雰囲気が大切になります。それは、後から入った(入社した)従業員は、その会社や工場の持っている文化や雰囲気に倣ってくるからです。
例えば、ある工場では規律を守ることに対して全体的に緩い雰囲気があったとします。朝、始業のベルが鳴ったにも関わらず従業員(作業者)がまだ更衣室にいたり通路を歩いていたりしています。入社した従業員(作業者)は、しっかり仕事をしようと思って入ってきていますが、前からいる従業員(作業者)がこうした行動をしていると、この工場はそれでいいんだと思い段々と自分もそうした行動、つまり始業のベルが鳴ってもすぐに作業を開始しないとか、通路を歩いているような行動を取るようになるのです。
逆に、別の工場では始業のベルが鳴ると作業者全員が作業を開始している。このような雰囲気を持っていれば、後から入った従業員(作業者)もこうした規律を守ることが当たり前と考え、それに倣うようになります。
こうした会社や工場が持つ文化や雰囲気というのは、トップ(総経理、工場長)の考え方や思いが反映されると考えてください。トップの思いを従業員に浸透させるのは、最初の刷り込みが大事なのです。ですから、本当は工場を立ち上げたときに、どのような方針を打ちだし、トップの思いを伝えることがとても大事になるのです。
逆の言い方をすると、一度出来上がってしまった文化や雰囲気を途中で変えるのは非常に難しいと言わざるを得ません。それでも変えなければならない場合、トップが交代した時がひとつのチャンスでしょう。ただし、繰り返しますが簡単なことではありません。トップの本気度、覚悟、そしてパワーが必要となります。
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◆根本隆吉
KPIマネジメント代表・チーフコンサルタント。電機系メーカーにて技術部門、資材部門を経て香港・中国に駐在。現地においては、購入部材の品質管理責任者として購入部材仕入先品質指導および品質改善指導。延べ100社に及ぶ仕入先工場の品質改善指導に奔走。著書に「こうすれば失敗しない!中国工場の品質改善〈虎の巻〉」(日刊工業新聞社)など。