経済産業省の支援により、一般社団法人 日本電気制御機器工業会(NECA)が主体となって運用している機械安全に関する要員認証制度の国際標準化に取り組んできましたが、このたび2018年6月5日~6日にフランスで開催されたIEC/IECEE CMC(認証管理委員会)会議にて賛同を得て、IECEEでその制度開発を本格的に進めることが正式に合意されました。
開発作業はTF(タスクフォース)で進められ、主査はNECA制御安全委員会委員(前田育男委員)が務めます。
現在、事務局からメンバー国に対し、広くTF への参加が呼び掛けられています。この後のTF 会議は今秋に日本で開催する予定です。
※IEC:国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)
電気・電子技術及び関連技術に関する国際規格の開発、発行および、同分野における適合性評価に関する国際制度を管理、運営する国際機関
※IECEE:IEC 電気機器・部品適合性試験認証制度(IEC System of Conformity Assessment Schemes for Electrotechnical Equipment and Components)
<機械安全に関する要員認証制度開発の背景>
現在、機械安全に関わる人(要員)の能力基準や認証の手順は、グローバルに統一されておらず、各企業や民間の認証機関でそれぞれ独自に運用されており、要員が一定水準の機械安全に関する能力を有しているかどうかを同一尺度で判断できない状況にあります。
機械安全に関わる要員に必要な能力を定義し、その認証手順等を国際標準化することにより、機械安全に関わる要員の知識、能力の水準をグローバル定義することができます。これにより安全な機械類や安全制御機器等の普及・流通を促進するとともに、結果として労働災害や事故が減ることが期待できます。
【経緯】
従来日本は、ものづくり現場での安全対策を、現場作業者への安全教育や指示徹底に大きく依存してきましたが、熟練者の高齢化や退職、またノウハウ伝承不足や若年・派遣労働者など、経験の浅い作業者の増加により、安全確保は、これまでのやり方では、十分でない状況になってきていました。
そのような中、機械類の安全性に関するISO規格やIEC規格等の国際規格が次々と発行され、安全構築の考え方や技術がグローバルに統一されてきています。
特に、機械類の国際安全規格の最上位に位置づけられるISO12100(機械類の安全性-設計の一般原則-リスクアセスメント及びリスク低減)等では、安全性を配慮した機械の設計を行うことが要求されており、国際規格に基づいた機械安全の考え方や技術を理解して、機械の安全設計やリスクアセスメントを実施できる人材が求められています。
さらに、第四次産業革命、IoT時代等の到来とともに、ものづくり現場は大きく変革しようとしており、ロボットと人間の協働など、フレキシブルで高生産効率を求めるモノづくり現場の複雑な制御を必要とする機械・システムの安全を確保するためには、これまで以上に機械安全に関する能力を有する人材が求められるようになってきています。
このためNECAが主体となって、国内及びアジアで運用し、普及している機械安全に関する要員能力認証制度を基にして、グローバルに通用する国際標準化を目指してきました。
なおIEC/IECEE CMC においては、機械安全分野から先行的に要員認証制度開発の具体的作業を開始し、将来は幅広く他分野の要員認証へ制度を拡大していく予定です。