販売店にも戦略目標必要 一年先、三年先…高揚感を持って
国の経済的規模を計る指標にGDPがある。GDPは国内総生産と訳され、2017年度の日本は550兆円台となっており、世界の経済強国である。
国内総生産は一年間にどれだけのモノ・サービスが生産されたかを示すものであるが、一般的には一年間にどれだけ支出されたかでGDPを見る場合が多い。経済の三面等価の原則から、生産と支出と所得は同じになるからであって、景気を見るのに分かりやすいのだ。
支出面からGDPの内訳を見ると、個人消費・政府系支出・投資・純輸出の4部で構成されている。このうち個人消費が60%強を占めているから、ちまたで言われる景気が良い・悪いの判断は、個人が金を使っているかどうかにかかってくる。日本はすでに貿易立国というほどの依存度はなくなっているが、それでも輸出に占める割合は14%くらいあるので、円が高い・安いに景況感が出てくる。また投資は25%くらいあって住宅と企業の設備投資が約半々ずつある。この他政府系の支出を含めてGDP全般の推移は、電気部品・機器営業の景気に連動する。
商品によっては、個人消費に強く影響されるもの、住宅や企業の設備投資あるいは輸出に影響されるもの、政府系支出に影響されるものなどさまざまである。GDPの数値は年度が終わって確定される。期の途中でも四半期数値の発表はあるが、それでも結果の統計数値である。販売店では統計数値を待って景況感を知るということはなく、毎月の売り上げの推移を見て、悪い時には同業者と談じ合って景況情報を取り合い、手を打っている。
GDPの数値は国力や国の状態や傾向を示すものだから、販売手段として参考にすべきものというより、今後の販売戦略を考えていくとき参考にするものである。メーカーは戦略的考えに慣れているが、販売店はどうしても戦術的思考が強くなり、販売員販売力強化に終始しがちになる。
しかし販売店の成長も他の企業と同じで戦略や戦略目標が必要なのである。販売店はメーカーの指針や世の中の景況感で動き手を打つだけでなく、顧客の現場情報を敏感に感じとって戦略的行動を取る時代なのだ。
クラウゼヴィッツ(注:プロイセンの軍人、軍事理論家)によると、戦略によって戦術は規定される。戦略がくるくる変われば戦術を実行する部隊はどうしていいか分からなくなる。だから戦略はしょっちゅう変えるものではない。しかし戦術の実行で予想をはるかに超えた成果が出たなら戦略の修正はあるし、周囲の環境の大幅な変化を感じたなら戦略変更はするべしとある。
スタッフを抱えられない中小の販売店は戦略性には弱い。期の売り上げ目標だけでその期を乗り切っている。だからメーカーの盛衰や世間の景況感にほとんど左右される。成長するためには戦略が必要だ。しかし難しく考えることはない。どの販売店も売り上げは拡大したい。それならじっと考えてみることだ。
一年先のこと、三年先のことを考える。考えが浅いと「思いつき」の手段が目の前に浮かぶ。そして戦略目標なしで手段に走ってしまう。例えば商談テーマ獲得営業、メーカーと同行営業、提案件数アップ営業、販売員研修などの強化、あるいは新しい商材を扱う-などの思いつきですぐ実行する。すぐ思いつく事は戦略ではない。思いつきの手段の目標は、掛け声のように聞こえるものだ。
戦略とはよくよく考えることから始まる。よく考える元になるのは国や業界の動向あるいは顧客の現場や現状などがある。少なくとも一年先、三年先を長考した結果は戦略になる。そこで戦略とは拡大であることに気づく。何を拡大したらいいのか。その拡大には必ずチャレンジを伴うはずであるし、戦略目標は高揚感を持って達成できる気になれる。そうなれば適当な手段が浮かんでくる。