[特別寄稿] オプテックス・エフエー株式会社 開発部 商品企画課
1. 非接触型変位センサの原理と用途
ものづくりの現場に於いて、センサは製品品質や工程の管理のために必須となっている。本項ではその中でも寸法や動きの測定時に使用する変位センサの最新の技術情報について解説する。
工場内で距離を非接触で測定する「変位センサ」には、光・超音波・電流など様々な原理を使用したものがある。しかし現在、工場のライン中で最も使用されているのは光(レーザ)を使った「レーザ変位センサ」である。これはレーザ変位センサが最も汎用性が高いためである。
例えば超音波式変位センサは、音の反射する時間で距離を測定する。原理としては「やまびこ」と同じだが、音の速度はそれほど速くないため測定周期が遅くなる。また分解能も一般的に0.1mm以上とそれほど高精度でもない。
また渦電流式変位センサは高精度に測定が可能だが、原理的に金属を近距離で測定することしかできない。
これに対しレーザ変位センサは、レーザを測定対象物に照射し、その反射角度を三角測量することで距離を演算する。(三角測量を使用しない方法もある)このため、対象物が光を反射しさえすれば測定が可能であり、非常に高い汎用性を持つ。
光源には主に赤色半導体レーザダイオード(630~670nm)が使用される。これに投光レンズを通して、測定対象物に照射する。レーザ光は測定対象物上で拡散反射(あらゆる方向への反射)し、その一部が受光レンズに入光し、受光素子上に集光される(実線)。
ここで測定対象物が光源に近づくと、同じように反射光は受光素子上に集光されるが、その位置は変化する(点線)。受光素子上の集光位置Xと測定対象物までの距離Lの間には、L / F = P / Xの関係が成り立つので、受光素子上の集光位置を検出すれば、測定対象物までの距離を求める事ができる。
またレーザ光が正反射する測定対象物(ガラス、鏡)においては、測定対象物への入射角と反射角がほぼ等しくなるように設置することで測定が可能となる。
投受光レンズ間距離Pや受光レンズ-受光素子間距離Fを設計上自由に決めることができる為、測定範囲数mmでサブミクロンの分解能を持つものから、測定範囲が1mに及ぶものまで、同一の原理で実現する事ができる。このため高精度な半導体素子の位置決めや組み立てから、長距離の鉄鋼製造時の寸法測定まで幅広く使用されている。
2. 非接触型変位センサにおける問題点
前述のように汎用性の高い変位センサであるが、受光素子上で適切な強度の反射光を受光しなければ正しく距離を検出できない。強度が強すぎる場合も弱すぎる場合も、受光波形の頂点位置の算出は不正確になる。
変位センサではこうした受光量の変化に応じて発光時間・発行パワー・受光ゲイン・受光時間(シャッター時間)などを調整する機能を備えており、現在の受光状態に応じたフィードバックを行う事で、反射率の高い金属表面から、反射率の低い黒ゴムまでを一台で測定可能としている。
しかしこのフィードバックには数~数十サンプリングを要するため、継ぎ目などで急激に色が変化した瞬間は測定が不安定になる場合がある。
3. 新規デバイスによる解決方法
こうした問題の解決のため、弊社ではイメージセンサ「ATMOS」を開発した。
ATMOSは「Auto Tuning cMOS」の略で、受光素子上に制御回廊を設けることで従来ICなどが行っていたフィードバック制御を、受光素子上で実現する物である。
このイメージセンサは、受光量が一定量を超えたところで自動的に電子シャッターを切る事ができる。これにより受光量が飽和することなく、どのようなワークでも適切な受光波形を得る事ができる。
またイメージセンサ自体の受光感度も当社従来比4倍と高い。
この「自動電子シャッター+高感度」という組み合わせの実現により、ワークを選ばずに安定した測定が可能となった。
また素子の読み出し速度も向上し、最速12.5μsでのサンプリングという従来比8倍の高速化も同時に実現した。
4. 設定ツールにおける問題点
どれだけ高機能・高性能なセンサであっても、その設定ができなければ現場での使い勝手の悪い物となる。高機能な変位センサは設定パラメータが多いため、パソコンでの専用設定ツールを用意する事が一般的である。
しかしパソコンのOSは定期的に更新されるため、運用期間の長いFA(Factory Automation)の世界ではOSのアップデートにあわせて設定ソフトの更新が必要となる。また、設定・立ち上げは運用時と異なる場所・担当者が行う事が多いため、運用時には現場に設定用のPCがあるとは限らず、ソフトウェアの入手性についても対応方法を考える必要がある。
特に近年ではセキュリティに関する意識が高まる中で、USBデバイスを通してのファイルコピーや、ソフトをインストールする事自体に制限を設けている企業もある。
いくらソフト自身の使い勝手が良くとも、こうした入手性の部分で困難があると使い勝手が良いとは言いづらい。
5. ネットワーク対応による解決方法
弊社の変位センサCDXシリーズでは、これらの解決策として変位センサにWEBサーバを搭載した。これにより、PCからはブラウザでセンサのIPアドレスを指定するだけで測定値の確認、設定の確認・変更が可能となった。
PC側ではソフトのインストールは不要で、ブラウザで当該アドレスを入力するだけなので将来のメンテナンス性や、OSのバージョンアップにも柔軟に対応可能となっている。
動作保証をしているブラウザはインターネットエクスプローラ・Chromeであり、ネットワーク上にアクセスしているなら、タブレット等の画面からの設定変更も可能である。
ライン導入後に設定を確認・変更する際などは、従来より各段に簡単かつ柔軟性の高い仕組みになっている。
6. オプテックス・エフエーの変位センサ
最後に弊社オプテックス・エフエー株式会社の変位センサについて紹介する。オプテックス・エフエー株式会社では新製品の変位センサ「CDXシリーズ」をリリースした。
これは三角測量の変位センサとしては世界最高である直線性±0.015% of F.S.を実現した高精度な変位センサで、前述のイメージセンサ「ATMOS」を搭載し高感度・高速な測定を実現している。
素子・光学系の高感度化により、レーザクラスは全シリーズで「Class1」となっており、安全性が高い。これにより簡便な安全対策での導入が可能となっており、この点でもコストメリットを出す事が可能となっている。
サンプリング時間も最速12.5μsと高速な上、ATMOSによる自動フィードバックがあるため、高速な変化に対しても安定して追従が可能である。
本体構成はセンサヘッドとケーブルのみであり、アンプユニットは存在しない。センサヘッドから直接Ethernetに接続可能のため、測定結果を直接PLCやPCに取り込む事が可能となっている。
Ethernet環境が現場にないため、アナログ出力が欲しいという場合には、弊社変位センサ用アンプユニットCDAシリーズを使用する。このユニットを介する事で「アナログ出力」「デジタル出力」「CC-link接続(CC-linkユニットを接続して使用)」という出力の拡張が可能となっている。
アンプユニットがないため、価格も35万円と、高精度変位センサとしては非常に安価に導入できることも特徴である。Ethernetで完結するユーザには簡単・安価にしつつ、アンプユニットによる拡張性も同時に実現している。
このほか、小型・安価な変位センサとしてはCD22シリーズ(150mmまでの短距離用)、CD33シリーズ(150mmより長い中距離用)と複数のラインナップを用意しており、測定内容に応じた提案が可能となっている。
7. おわりに
変位センサはFAで標準的に使われるようになったものの、高速化・高精度化の横でフィードバックやソフトウェアの使い勝手という部分には大きく手が付けられてこなかった。
弊社が新製品でこうした部分への改善提案を行うことで、FAにおける情報化推進の一助になれれば幸いである。