最近、コンシューマや法人向けのビジネスをしている企業から、製造業向けに製品を展開したいが、実際売れるだろうか? という相談をよく受ける。応援をしたいのは山々だが、本音を言うと厳しいものも結構ある。
製造現場で使うために最低限クリアしておかなければならない基準、例えば防水防塵性や長期供給できるかどうかなど、そのあたりを想定していないことが多い。カタログスペック上、性能や機能が優れているから売れるだろうという感覚でいる企業は少なくない。
▼良い製品だが、訴求すべきポイントがズレているケースにもよく出会う。例えば、最近IT業界でヒットしているというネットワーク機器で、自治体や金融機関等に導入されているものがあった。それを使えば機器の管理が楽になり、情報システム担当の負荷を下げられるという。
確かに工場のネットワーク化やIoTは関心の高いテーマで、現場にもやりたいというニーズはある。しかし現場が本当に求めているのは、いまの製造現場、生産ラインの効率や品質を上げることだ。ネットワークで言えば、高速通信ができ、その上で堅いセキュリティと遅延や欠損のない信頼できるものが欲しいといったところだろう。
機器の管理が容易になるというのは彼らの望むところとは若干異なり、心には響きにくい。選定や決裁で重要な人は誰か。何を重視するかをきちんと把握しておかなければならない
▼日本の産業の裾野は広い。自動車から電子機器、機械、化学、ITと多くの業界に、大中小さまざまな企業がひしめいている。しかし多くはビジネス領域をある程度限定し、他分野や異業種へのチャレンジを敬遠してきた。
その結果、お互いにすみ分けがなされ今に至る。しかし、最近はそれも変わりつつある。変化をリードするのは、いつの世も若者、ばか者、よそ者だと言われる。
少子化の影響で若者の数は減っているが、よそ者の素質を備えた人や企業はたくさんいる。彼らの活動を支援し、活発化することが日本産業をもうワンランク上に引き上げてくれるはずだ。