中国工場の良し悪しはトップの方針・考え方で決まる 後編
目標に向かって従業員と一丸
中国の工場運営において、そのトップの方針や考え方は非常に重要です。日本の中小企業を見てみると、社長の方針や考え方がそのまま会社の方針や考え方となっています。実は中国の工場というのは、日本の中小企業の形態と類似している点が非常に多く、工場の規模に関わらず中小企業そのものと言っても過言ではありません。中国工場におけるトップの影響力について、全3話の最終回となります。
次に、中国で工場を立ち上げたときのトップの方針や考え方が大きく影響し、よかった事例を紹介したいと思います。
ここも日系企業ですが、既に中国内にいくつかの工場を持っています。生産量が増えてきたのでもうひとつ中国内に工場を作ることになりました。この会社では中国内にいくつかの工場があることから、日本の本社の方針で工場同士を競争させていました。生産性はどこの工場が一番よいとか、品質はどこが一番とか、コストはどこが一番安いかなどを工場間で比べて発表していました。
そのような中、新工場の総経理(日本人)が「グループ工場の中で一番の品質になる」という方針を打ち出しました。アドバルーンを上げたのですね。「品質で一番を目指す」大変すばらしいことです。
ところが、他の工場からは、この方針は非常に評判が悪かったそうです。「立ち上げたばかりの工場が品質で一番になれる訳がないだろう」と。
新工場の総経理は、そんな評判はまったく気にしなかったようです。その総経理から話を伺ったところ、次のように述べていました。
「グループ工場の中で一番の品質になることが本当の目的はなかった。新しく工場を立ち上げたときに、そこで働いているみんなが同じ方向に向かって仕事をするようにしたかった。そのために品質で一番という方針はちょうどよかった」と。
「実際に、この工場で働いている幹部、管理職、事務員、作業者のみんなが品質という目標に向かって、同じベクトルで仕事ができたことがなによりだった」とも言っていました。
新工場を立ち上げてから3年で、この工場はグループ工場で一番の品質を成し遂げています。
これなどは、工場トップの考え方が、方針をうまく使って工場立ち上げという難しい時期を従業員一丸とすることができた好例といえるでしょう。
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◆根本 隆吉
KPIマネジメント代表・チーフコンサルタント。電機系メーカーにて技術部門、資材部門を経て香港・中国に駐在。現地においては、購入部材の品質管理責任者として購入部材仕入先品質指導および品質改善指導。延べ100社に及ぶ仕入先工場の品質改善指導に奔走。著書に「こうすれば失敗しない!中国工場の品質改善〈虎の巻〉」(日刊工業新聞社)など。