メーカーと販売店営業 役割認識で最強チームに
パソコンの出現で「ソフト」という言葉が使われるようになったが、近年ではスマホの出現で「アプリ」という言葉がよく使われている。制御機器や部品業界の営業マンは「アプリケーション」という言葉を使う。
製造業ではたくさんの機器や機械装置を使う。営業マンはこれらの機器や機械装置には入力部・コントロール部・出力部があることをまず習う。実際に製造の現場にはどんな機器や機械装置があるのか、それはどのように動くのかを営業マンは知ることによって部品や制御機器の売り込みをするのであるが、アプリケーションはその際に入力はどんな方法でやるのか、コントロール部はどんな機器を使うのか、出力はどんな方法でやるのかを確かめるためのガイドになっている。
現在の生産ラインでは位置・時間・計数・温度・圧力等のセンサや計測器を使って高度な自動化が成されているが、まだ自動化が成熟していなかった頃、次々に発表される部品や制御機器が一体どこに使われているものなのか、営業マンにはよく分からなかった。そこで部品や機器の使われ方がひと目で分かるような図入りの小冊子がつくられるようになった。ちょうど料理のレシピ本のように見えたので「料理の本」などとも言われた。まだアプリケーションという言葉が一般的でなかったからだ。
制御回路がシーケンス制御からプログラマブルな制御になった頃、機械装置や生産ラインで使用される機器や部品の使われ方を「アプリケーション」と言い出した。アプリケーションという言葉が盛んに使われ出した頃に営業はアプリケーション探索に励んだ。そして発見したアプリケーションはカタログや小冊子に載せられ、同業界・同業種の現場へ売り込まれた。このような活動は「横展開営業」と言われて定着していた。
1990年代になると、製造業は人手の方が確実で安上がりの箇所を除き、自動化はほぼ成され、目新しいアプリケーションは増えなくなった。メーカー間の競合は大競争時代を迎え、営業は競合商品の発見・置き換え営業となった。以後現在に至るまでこのような営業が続いているが、営業からアプリケーションという言葉が消えたわけでなく、むしろ盛んに使われている。
しかし現在のアプリケーション営業と80年代中頃までやっていた成長期のアプリケーション営業の中身は違う。
成長期のアプリケーション営業は興味を持って実際の使われ方の発見に力を注いだ。自分たちが見つけたアプリケーションを同種の顧客に積極的に迫力を持って売り込むと、そこにまた別のアプリケーションを見つけるという営業であった。
現在のアプリケーション営業は、あらかじめ用意されたアプリケーションを顧客に紹介して興味をそそるという営業であるから、成長期のアプリケーション発見営業と似て非なるものである。言い換えれば成長期のアプリケーション営業はマーケティング的要素の強い営業であり、現在のそれは商品同様にセリングの強い営業と言えるのだ。
一般的に機器や部品の営業職を同一視する傾向があるが、メーカーの営業と販売店の営業は違う。メーカーの営業は自社の商品ありきから出発する営業であり、販売店の営業は自分たちの顧客ありきから出発する。今日の売り上げ達成のために商品力と現アプリケーションを売り込むのは両者とも同じであるが、メーカー営業の役割は新たなアプリケーションを探し、新たな市場向けの商品開発情報の入手を積極的に行うことにあり、販売店営業の役割は顧客の動きから新たな商材を発見することや新しい見込み客の開拓をすることにある。
両者がそれぞれの役割を認識して、ディーラーヘルプチームとして活動すれば最強となる。