赴任者のための現地(中国人)社員のマネジメント(その1)
-赴任直後にすべきこと-②
知ったかぶりは致命傷に
今回は赴任直後に力を入れるべきことの続き(工場に関係する契約や規定を確認し理解する)と、前回の記事で書いた「工場の現状把握」をせずに、あれこれ指示を出して失敗した新任工場長の事例を紹介します。
日系中国工場に中国での経験を買われて工場長として採用された年配の方がいました。結果を出すことを期待されていたので、結果を出すことにこだわるあまりに急ぎすぎてしまいました。中途採用ですから、その工場の全体の流れや各工程の詳細は入社時点では分かっていません。
しかし、入社後、それらを十分に把握しないうちに、目についたものから手当たり次第に「ああしろ」「こうしろ」と指示を出して、やり方を変えてしまいました。スタッフからどうしてこういうやり方をしているのかなどの話を聞くことは、まったくしないで違うやり方を指示しました。
また、これまでの指示命令系統とは違う指示の出し方をしました。その工場には製造の責任者がいて、今までの工場長は製造に関してはその責任者を通して指示を出していたのですが、新しい工場長は直接現場の科長にあれこれ指示をしました。製造の責任者のメンツは丸つぶれになった格好です。
その結果、スタッフは全員そっぽを向いてしまいました。表面上は命令に従うふりをしていましたが、実際は何一つ従っていなかったのです。新工場長が出した指示自体は的を射たものもありましたが、ひとつも進みませんでした。結局、半年で工場を去ることになりました。
工場に関係する契約や規定を確認し理解する
そして絶対にやらなくてはいけないのが、対外的な法的契約書類(登記書類、賃貸契約、政府からの許認可書類等)を確認することです。
これらがどのような内容かをよく確認します。前任者との引き継ぎのときに担当の中国人スタッフも交えて確認するのがよいと思います。前任者もこの辺についてはきちんと理解していない可能性はありますが、みなさんはそうならないようにしてください。期限のあるものなどの場合、更新するのか、そのときの条件はなど準備しておくことはたくさんあります。工場トップの重要な仕事のひとつと認識してください。
また、こうした重要書類の保管は必ず施錠管理をすること。これは中国の人を信用するとかしないとかではなく、きちんと管理していることを周りに見せることが大事です。今度来たトップはきちんとした人だと認知させることで、この後の仕事を進めるうえでのやりやすさが違ってくるでしょう。
また、社内規定の内容も面倒くさがらずに確認してください。日本の規則と違うことはたくさんありますので、最初に理解しておきます。
このときに、知ったかぶりをするのは致命傷になる可能性大です。事前に多少勉強してきたとしても、来たばかりのときは分からないのが当たり前です。分からないものは分からないとして「どうしてそうなっているのか」「どうしてそのような決まりになっているのか」など分かるまで聞いてください。それで全然問題ありません。
ただし、メモを取るなどして、同じことを2度も3度も聞くのは中国人スタッフに本気度を疑われますので、やめた方がよいでしょう。
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◆根本 隆吉
KPIマネジメント代表・チーフコンサルタント。電機系メーカーにて技術部門、資材部門を経て香港・中国に駐在。現地においては、購入部材の品質管理責任者として購入部材仕入先品質指導および品質改善指導。延べ100社に及ぶ仕入先工場の品質改善指導に奔走。著書に「こうすれば失敗しない!中国工場の品質改善〈虎の巻〉」(日刊工業新聞社)など。