GDP 5兆円押し上げ
日本とEUの間でEPA(日EU経済連携協定)とSPA(戦略的パートナーシップ協定)が7月17日署名され、19年3月下旬の発効が予定されている。これにより日本とEUの間で輸出入される製品の多くで関税が撤廃されることになり、その効果は実質GDPを5兆円押し上げると言われている。
チーズやワインなどが安く手に入るようになると話題になっているが、自動車や電気製品、一般機械、化学工業品など工業製品の100%で関税撤廃となり、日本の製造業へ好影響を及ぼすと期待されている。
■EPA(経済連携協定)とは?
EPAとは経済連携協定(Economic Partnership Agreement)の頭文字をとったもので、貿易や投資の自由化と円滑化を進めるための国際協定。
FTAが関税や貿易障壁などを削減・撤廃するものにとどまるのに対し、EPAはより広く深い関係を強化するもので、投資や人の移動、知的財産の保護や競争政策のルールづくりなども含まれる。
■大規模経済圏の誕生と経済効果
人口は日本が1億2700万人、EUが5億1200万人で、合計すると6億人強となり世界の8.5%を占める。GDPについても、日本が4兆8720億ドルで世界の6.1%、EUが173兆90億ドルで同21.7%。合計すると27.8%となり、米国の24.3%、中国の15%を上回る。日本とEUは地理的には離れているが、EPAによって世界最大規模の経済圏を形成することになる。
日本とEU間の輸出入は、16年は日本の対EU輸出額は8兆円、輸入額は8.2兆円。関税撤廃を含めた各種効果により、日本にとっての経済効果は実質GDPで5兆円の押し上げ(1%)と約29万人の雇用が増加すると見込まれている。
■自動車部品、産業用ロボットなど即時撤廃へ
工業製品の対EU輸出は5.8兆円あるが、そのすべての製品で100%の関税が撤廃される。発効時点では無税製品の割合は38.5%だったが、即時撤廃により81.7%に上昇し、残りは段階的に引き下げられ撤廃されていく。輸入に関しても100%の製品で関税が撤廃される。
主な製品に関して、自動車関連では乗用車が現行税率10%から8年目にゼロになり、自動車部品ではエンジンやタイヤ、ECUなど貿易額ベースで9割超の製品で即時撤廃される。家電・電気製品、産業用機械では、14%と高関税が課されていたカラーテレビが6年目に撤廃。産業用ロボット、ディーゼルエンジン、タービン、ベアリング、エアコンなどが即時撤廃となる。
化学品では医薬品材料、合成樹脂、プラスチック製フィルムなど、繊維関連では毛と綿、化合繊の糸・織物など、鉄・非鉄でも鉄鋼、ばね、ねじ、アルミ箔などの関税が撤廃される。
EPAによる製造業各社への好影響は関税撤廃による輸出入の増加だけではない。輸出入手続きの簡略化に加え、海外向け製品へのヨーロッパ製品採用による海外規格対応の効率化と、それを背景にしたグローバルサポート体制の拡充など多方面にわたる。
これまで国内向けの事業が中心だった企業にとってもヨーロッパへの販路拡大がしやすくなり販売機会が増加する。国内メーカーだけでなく、各分野の専門商社、日本に拠点を構える外資系メーカーなど、上流から下流まで、どこに属する企業にとってもビジネスの追い風になる。