【特別寄稿】マシンビジョンにおける照明の役割と最新技術、オプテックス・エフエー LED営業部

照明の明るさ自動管理と予知保全

マシンビジョンシステムとは、照明、レンズ、カメラ、画像処理装置が組み合わさったシステムであり、そもそも光源からの光なくして画像処理は始まらない。しかしただ照明で明るくすればうまくいくというものでもなく、照明の最適化がマシンビジョンシステムの成否を左右すると言っても過言ではない。本稿では、マシンビジョンにおける照明の役割と最新技術による明るさの管理について紹介する。

 

マシンビジョンにおける照明の重要性

照明から対象である物体に照射された光は、物体によって反射、散乱、屈折、吸収など、なんらかの作用を受ける。その光の一部をレンズが捉え結像し、カメラの受光センサ(CCDやCMOS)がその結像された光の明暗を電気信号に変換することで画像が得られる。この画像を画像処理装置で解析、比較、演算を行い、何らかの判定を下す。

このように画像処理するための元となる画像データは、照明とレンズによって光の明暗が決定づけられる。この光の明暗で認識したい内容を特徴付けられていなければ、いくら高度な画像処理を行っても見えないものは見えない。ここでの画像品質が、マシンビジョンシステム全体の性能を左右するのである。

ではどうやって特徴量を最大化するのかというと、その多くが照明の役割となる。通常はカメラと対象物の相対位置は固定である事が多いため、どんな照明でどの方向からどこに向かってどれくらいの強さで光を照射するかなど、さまざまな条件を最適化しながら、特徴量を最大化することを目指すことになる。これがマシンビジョンにおける照明の役割となる。

 

LED照明の利点

マシンビジョンにおいては、古くはハロゲンランプや蛍光灯が主役であったが、LEDの高輝度化によりその領域を拡大し続け、今や最も多く利用されている光源となっている。これは近年のすさまじい高輝度化に加え、LED特有の以下の利点によるものである。

LEDは小さな点光源であるため、組み合わせによる形状の自由度がある。集光して高効率に照射することも、拡散させて面形状で発光させることも可能である。短い波長の紫外線から、可視光の青、緑、赤、白、さらには赤外線と波長を選択することができる。半導体であることからスイッチングに強く高速な応答性により、必要な時だけ点灯する点灯制御が可能で、省エネと寿命の点で有利である。

さらに瞬間的に高い電流を流すことで明るさを稼ぐストロボ発光でも使うことができる。高効率で消費電力が低く、輝度半減値までが数万時間と長寿命である。これら多くの利点がマシンビジョンにおいて幅広く支持された結果、LEDが画像処理用照明の主役となっている。

 

LED照明の課題

マシンビジョン用LED照明のさらなる性能向上のために、いくつか改善したい課題がある。

・LED個々の明るさのバラツキ

ひとつは複数光源の集合であるがゆえの個々の明るさのバラツキである。原因のひとつはLED個々の光度のバラツキである。これにはLEDメーカが光度測定による選別を行い、ランクを設けることで同一ランク内でのバラツキ幅を小さくすることで対応している。

もうひとつは順電圧のバラツキである。LED照明は通常数個直列に接続し、これを複数並列で接続した回路で構成されている。順電圧のバラツキによりこの並列回路間で電流値の違いが生じ、結果明るさのバラツキとなっている。

 

・温度変化による明るさの変動

LEDは点灯により発光層の温度が上昇し、温度が高くなるほど発光効率は低下する。特に赤色で顕著に低下する。これまではLEDチップから筐体までの熱抵抗を下げたり、筐体の表面積を増やして熱放射を増やして温度を下げるなどの放熱対策を行ってきた。それでも満足のいく十分な効果は得られていなかった。

・長期的な輝度劣化に対する明るさの管理

LEDの性能が向上し寿命も飛躍的に延びた。最近のLED単体では4万時間で30%の光度低下と言われている。マシンビジョンシステムでは照明が一定の明るさレベルを維持することで、画像処理の性能を担保している。よって長期的な光量の低下には調光値の調整によってそのシステムを維持している。

LED照明は高速な応答性でON/OFF制御が可能であるため、必要なタイミングのみ点灯することで、点灯の積算時間を短くし光量の低下を遅らせている。しかし調光値の調整が不要になるわけではなく、ユーザはシステム維持のための明るさ管理を避けて通ることはできない。

 

センシング照明による課題解決

こうした課題解決に向けて、オプテックス・エフエーが独自開発したLED照明が、センシングLED照明である。

・明るさ変動安定化回路の「FALUX(ファルクス)」

先に挙げたLED個々の明るさのバラツキに対する対策として、順電圧にバラツキがあっても一定の電流が流れるように、照明に入力電圧依存型の定電流回路を内蔵した。これは入力電圧から各並列回路の電流を制御するカレントミラー回路により、それぞれ一定の電流値が流れるようにするものである。これにより並列回路間の電流バラツキがなくなり、個々のLEDに同じ電流が流れて明るさのバラツキもなくなる。

電流を一定にすることで明るさのバラツキはなくなるが、LEDの特性でもある自己発熱や周囲温度の上昇による発光効率低下の問題が残る。赤色LEDでは温度による発光効率の低下が大きく、20%程度明るさが低下していた。

温度による明るさ変動の解決方法として、照明に温度補償回路を内蔵した。これはLED照明の色ごとに異なる温度変動特性により、電流値の調整で明るさを補正するものである。これにより温度による明るさ変動は1~2%程度となり、従来品比1/20まで変動を抑えることができ業界最高水準を達成している。

これら入力電圧依存型定電流回路と温度補償回路をあわせて“FALUX(ファルクス)”と呼んでいる(特許登録済)。

 

・輝度管理と長期安定性

センシング照明は、照明にフォトダイオードを搭載してLEDの光をセンシングする回路を内蔵している。これにより自身の輝度をモニタリングすることが可能となる。さらにそのモニタ値からフィードバック制御により約4万時間もの長期の輝度安定が可能となる。

先に述べた「FALUX」の温度補償回路は時間軸として秒から分単位の変動を抑え、明るさを安定させるものであった。しかしLED照明は数万時間という長期にわたり使われるものであり、長寿命のLED照明とはいえLEDの劣化により4~5万時間で輝度は半減する。この長期にわたる輝度の安定化を担うのが「FALUX sensing」である。「FALUX sensing」は次の3ステップによって実現される。

①センシング
照明に内蔵したフォトダイオードで輝度を測定

②モニタリング
コントローラ側で輝度の測定値を表示

③フィードバック
輝度の変動を電圧調整により安定化

 

照明の明るさをセンシングし、コントローラの表示パネルに輝度を表示することで、外部機器や測定器を用いずとも輝度をモニタリングすることができる。さらには工場出荷時の明るさを維持するために、モニタ値が安定するよう自動的に出力電圧を調整するフィードバック制御が可能となる。これにより長期の使用でも輝度の変動を1%程度に抑えることができる。

また、フィードバック機能は長い延長ケーブル使用時の電圧降下による輝度低下を補正することにも有効に作用する。「FALUX」が内部温度パラメーターによる静的制御とすれば、「FALUX sensing」は複数のパラメーターの変動による輝度変化を、フィードバックにより安定させる動的制御と言える。

照明は従来どおりの2ピンのコネクタを採用し、この2線により電力供給とデータ通信を行う電力線通信を実現している。

当社では、リング照明、バー照明、バックライト照明、同軸照明、スポット照明において、センシング機能を搭載したLED照明を幅広く展開している。

 

照明の予知保全がIoTで可能に

LED照明の輝度をリアルタイムでモニタリングができるということは、照明の明るさの継時変化を見える化することができるということである。長寿命のLED照明であっても長年の使用によりLEDは劣化し、輝度が落ちてくる。従来、この状態では画像の明るさが足りず、NG判定としていたが、輝度のモニタリングが可能になることで照明の交換時期の予知・保全が可能となった。

特に、当社の照明コントローラOPPD-30Eは、業界で唯一、イーサネット通信で照明の明るさを外部モニタリングすることが可能なため、IoTツールの一つとしてパソコンやPLCと通信し、画像検査装置の予知保全を可能にした。

このような機能と標準価格で39,800円(税別)という高いコストパフォーマンスが評価され、本製品はロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)が主催する「中堅・中小企業向けIoTツール募集イベント」において、「OPPD-30E」が「スマートものづくり応援ツール」に、「センシング照明とOPPD-30E」が、「スマートものづくり応援レシピ」にと、2年連続で選出された。

当イベントはRRIが経済産業省の支援のもと、製造業におけるIoT推進を目的として、簡単・低コストで利用できる製品やサービスを募集したものであり、業界初の選出となった。

 

おわりに

マシンビジョンにおける照明の役割は、単に明るくするためのものではなく、特徴抽出のために最適な画像を撮像するためのキーファクターであり、マシンビジョンシステムの成否を分ける。ライティング技術とは、アプリケーションの目的を正しく理解し、経験と最新の知見から、お客さまの要求に対して最適な照明条件を提示するものである。

最新の技術として「FALUX」によるバラツキの補正や温度補償回路での輝度安定化と、「FALUX sensing」による長期的な明るさ管理を紹介したが、今後も当技術に対応したセンシングLED照明のラインアップを順次増やしていくと共に、お客さまに対してさらなる価値を提供していく。

 

参考:オプテックス・エフエー「明るさを自動で管理できるセンシングLED照明」

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