世界的にロボット需要が過熱している。国際ロボット連盟(IFR)が発表した世界の産業用ロボットと業務用サービスロボット市場の最新レポートによると、2017年の産業用ロボットは販売台数・販売額ともに過去最高を記録し、販売台数も過去5年間で約2倍まで拡大。業務用サービスロボットも17年は売上高が39%増と急激に伸びた。
この勢いはしばらく続き、21年には産業用ロボットの年間販売台数は1.6倍、業務用サービスロボットも売上高ベースで6.9倍まで増加すると見込まれている。
産業用ロボット世界市場動向
産業用ロボットの17年の販売台数は、前年の30%増の38万1000台となり過去最高を記録。販売額は21%増の162億ドル(約1兆8200億円)で過去最高となった。
津田純嗣IFR会長は「世界の産業用ロボット市場はリーマンショック後から年平均15%の伸びを続けている。17年は中国の拡大もあり30%増となった。21年に向けてこれまでと同じ二桁増で成長し、21年には年間販売台数63万台まで達するだろう」と予測している。
不安材料としてはアメリカと中国の貿易戦争を挙げ、また市場の急拡大で部品不足が発生し、供給が滞ったことについても「30%増で各社が部品調達に苦労したのは事実。今はロボットメーカー、サプライヤも15%の市場成長を認識して対応しており、変動も許容範囲として見ているので大丈夫だろう」と話した。
地域別状況中国市場で異変
地域別では、中国と日本、韓国、アメリカ、ドイツの5つの市場で総販売台数の73%を占めた。
このうち中国は36%で、世界の半分近くが中国向け。中国は自国ロボットメーカーを育成し、25年までに自国メーカーで国内シェア50%を目指しているが、17年の市場はそれとは逆行。海外メーカーが販売台数で72%増と絶好調で、シェアを69%から75%まで拡大した。
津田会長は「中国ローカル企業のシェアが減少したのは数年ぶり。しかし中国には6000社ものロボットメーカーがあり、助成金やスタートアップも盛んだ。今後は多くの中国企業が強くなっていくだろう」とした。
販売台数の2位は日本。18%増の4万5566台で過去2番目に大きな数字となった。日本は世界一の産業用ロボット生産国で、世界販売台数のうち日本メーカーは56%のシェアを占めた。
3位は韓国。エレクトロニクス産業での導入が18%減と伸び悩んだ。4位はアメリカ。過去最高の3万9732台を販売し、7年連続増加となった。自動車産業が堅調で、国内への工場回帰も好影響を与えている。5位はドイツ。ヨーロッパ最大の市場で、自動車が堅調で7%増の2万1404台だった。新興の注目市場がベトナム。半導体の投資が伸び、世界7位の市場と急拡大している。
エレクトロニクスが急拡大
産業用ロボットの需要の牽引役は依然として自動車だが、エレクトロニクスや半導体製造も拡大し、金属加工や飲食料品なども萌芽しつつある。
自動車産業は、17年は22%の伸びを示し、総販売台数のうち33%を占めた。溶接や塗装など多くの工程でロボットによる自動化が行われているが、今後は最終組み立てや仕上げ作業のための協働ロボットの活用が期待されている。
中小企業が多いティア2以下はロボット導入や自動化が遅れているが、ロボットの小型化やプログラムレスなど使いやすさの向上で状況は変化するだろうとしている。
エレクトロニクス産業向けの販売台数は33%増と急拡大し、過去最高の12万1300台となった。これは総販売台数のうち32%を占め、自動車産業に肉薄する所まで来ている。
電気機器は小型部品が多く、ロボットハンドやエンドエフェクタ、マシンビジョンなどの進化でロボット作業の幅が広がる。また電子機器組み立て工場は離職者が多く、作業者確保が困難になっている。その解決手段としてもロボットに対する期待は大きい。
このほか、金属産業は55%増と大きな伸び。製薬や飲食料品といった3品産業は、ニーズの多様化により多品種少量生産に動きつつあり、ロボットへの関心が高い。また手で触らないので衛生的になることへの評価も高く、協働ロボットとマシンビジョンの組み合わせで成長するだろうとしている。