赴任者のための現地(中国人)社員のマネジメント(その2)
-労務管理・リスクマネジメント-②
スタッフ信頼もチェック必ず
人事労務管理全般に関して言うと、人事労務に関する管理や規則すべてに日本人が関与する、決めるのは無理と言わざるを得ません。中国の人のことは中国の人がよく分かっているので、その管理は中国の人に任せることも必要です。それでうまくいっている日系工場も多くあります。
日本人の感覚と中国の人のそれは違うので、日本人の感覚で決まりを作ってもうまくいかないことは多々あります。例えば、日本の工場の決まりをそのまま使って失敗しているケースもあります。逆に、日本人の感覚では無理と思うことも中国の人に任せるとあっさりとルール化してしまうこともあります。
ある日系工場に関わった時のことですが、昼食を現場で食べている作業者がいることに気が付きました。その工場に食堂はないので、ほとんどの作業者は工業区内の食堂に食べに行っていました。もちろん会社から食費補助が出ています。
残りのごく少数の作業者が工場内(作業現場)で食事をしていたのです。現場で食事をすると、当然のことながら食べ物が製品に付着・混入する危険性が出てきます。すぐに現場での食事を止めてもらわなくてはなりません。状況を日本人の総経理に報告し対応をお願いしました。ところが、工場内に食事をとれる場所を確保してからでないと禁止にできないと言って、対応を保留しました。
食事をとれる場所を工場内に確保することが難しかったこともあり、1カ月たっても何の対応もされていませんでした。そのままにしておく訳にもいかないので、総経理に中国人スタッフの考えを聞いてみましょうと言い打ち合わせをしました。中国人の総務部経理は、すぐに現場での食事を禁止にすると言い、30分後には各班長を通じて作業者に通知されました。
ちょっとしたことですが、日本人がへたにあれこれ考えるより、中国の人に任せた方がドラスチックにやるという事例でした。
ただし、中国の人に任せたとしてもチェックを怠ってはいけません。人事にしても会社規則にしても必ず総経理の決済は必要なはずですから、そこでチェックしてください。ポイントは、好き勝手にやらせない、暴走させないことです。中国の人は身内を優遇するような恣意的な人事を平気でやります。中国人スタッフを信頼するのはいいことですが、チェックは必ずすることを忘れないでください。
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◆根本隆吉
KPIマネジメント代表・チーフコンサルタント。電機系メーカーにて技術部門、資材部門を経て香港・中国に駐在。現地においては、購入部材の品質管理責任者として購入部材仕入先品質指導および品質改善指導。延べ100社に及ぶ仕入先工場の品質改善指導に奔走。著書に「こうすれば失敗しない!中国工場の品質改善〈虎の巻〉」(日刊工業新聞社)など。